必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「ま、この事に関しちゃ追々頼むよサフィール。まだお前は一応バチカルにいなきゃならないんだしな」
「・・・えぇ、それは構いませんよ・・・っとちょっと待ってください。今の流れから一つ思ったことがあります」
「なんだ?」
「肝心の貴方は結婚するつもりはないんですか?今となってはナタリア元殿下との婚約は解消されているでしょうからそちらは問題ないでしょうが、貴方は唯一キムラスカの王族として次代を繋げる存在です。それは民主政治に移るとは言え、今の状態ではあまり事情を知らない貴族からすれば歓迎出来ないことかと思われますが・・・」
「あぁそういうことか」
そんな姿にピオニーの件は終わりだと声をかけるルークだが、了承しかけた時にハッとしてから出たサフィールの問いに納得の様子を見せる・・・今の婚約者のいない状態のルークを貴族が好ましいと思うわけがないと思っただけに。
「その点に関しちゃ父上にも叔父上にも話はしてあるよ。民主政治に移行するって話をしてる状態で変な奴と婚約してそれを漏らされたら面倒だからな。準備が全く出来てない状態でその案をな」
「あぁ・・・下手をすれば国民が混乱するばかりか、その情報から貴族が良からぬ事を企む可能性すらありますね。民主政治を止めようとしたり、民主政治になってから地位を上げるために手を施すなどと言った手段を取る事も・・・そう考えれば慎重になるのも当然、というわけですか」
「そういうこと。だから父上に叔父上にはそれまでは結婚しないって言ってあるし納得はしてくれてる・・・慎重を期してな。まぁ貴族は王族に取り入る機会が遠ざかった事を不満に思うだろうが、変にぬか喜びさせても悪いしそこは勘弁してもらうけどな」
「成程・・・」
ただそれはまだ結婚の時期ではないとその考えまでも明かした上で対策はしたとルークは笑顔で言い、サフィールも反論が出てこずウンウンと頷く。
「・・・ルークはそれまで結婚しないんですね。聞いてたから分かっていたんですけど・・・」
「・・・アリエッタ?」
と、そこに今まで黙っていたアリエッタが思い詰めた様子で口を開いた事に一同の視線が集まる。
「・・・アリエッタ。それまで待たなければ今のルークの立場上自由には結婚など出来ないんですよ。前にも言ったではありませんか」
「イオン様・・・はい、わかってるんですけど・・・」
「・・・あ、あの導師・・・何やら少し予感がするんですが、今のアリエッタの発言は何を意味しているんでしょうか・・・?」
イオンがすぐにそんなアリエッタをなだめにかかり悲し気に頷くが、サフィールは恐る恐るその言葉の意味を問う。
「・・・サフィール、この事に関してだけは本当にこの場だけの事で済ませてくださいね?これは彼女がここにいる理由にも繋がるんですが」



「ルークとアリエッタは付き合ってるんですよ、勿論恋愛的な意味でね。ちなみにご両親であるファブレ夫妻にインゴベルト陛下もご了承してるそうですよ」



「・・・あぁ、やっぱりそういうことでしたか・・・ってファブレ夫妻にインゴベルト陛下も公認しているとは、また意外なんですが・・・」
そんな予感を肯定する答えがイオンから返ってきた、両親にインゴベルトの公認付きと。その答えにサフィールは力が抜けかけたが、公認の部分に何故と興味を示す。
「・・・父上達の考えとしちゃそうした方がいいってのがあるからだろうな」
ルークが椅子に背を預けながらその声に答えるが、どこか決意に満ちた物であった。









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