必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「・・・話を戻すがそう言われた後、シンクは言葉に詰まって何も言えなくなっていた。そこで私は死ぬと結論を急ぐより、一先ずこの世界で生きてみてはと提案したんだ。その時は彼は微妙な表情になったんだが、続けてフローリアンが嬉しそうにそうしようと言ってきた事でやむなくという形ではあるが生きることを了承したよ。それで三年の間共に暮らしているわけだが、今のところ彼から諦めたような言葉は出てきてはいないよ」
「そうですか・・・と、ちょっと気になったのですが今シンクは神託の盾として活動しているのですか?どうにもそういった風に聞こえなかったのですが・・・」
「所属はしているが、牢から出てしばらくはフローリアンの相手をしてもらっていてね。それである程度フローリアンも誰かと離れても大丈夫と見られるようになってからは神託の盾として復帰してもらったが、その時はもう六神将として謡将達に加わっていた経緯もあったしブランクがあったからね。それにフローリアンとの時間も必要だと思ったから形として上層部から懲罰として私預かりの身となって、地位を下げて裏方の書類仕事の方に回ってもらったよ」
「そうですか・・・対外的な処置としても妥当と言うところでしょうね」
「まぁ僕に対して皮肉を言うところなどは変わらないんですけどね・・・そのところはまだ彼も割り切っていないのでしょうが、僕はそれでもいいと思います。彼も元々僕に対してあまりいい感情を持っていませんでしたし、その皮肉も昔に比べてどこか暖かみのあるものでしたから・・・ゆっくりとこのまま行ければいい、僕はそう思います」
ウッドロウはそんな空気を変えるべく今のシンクの事について述べ、サフィールの更なる質問に現実的な部分も併せて答えイオンもしみじみと徐々の変化に喜ばしいと感じたように話に加わる。
「・・・色々ありすぎて少し頭の中がごちゃごちゃしていますが、とりあえず結婚の事やシンクの件がうまくいっているということは祝福しますよ」
「ありがとう」
「ただ・・・こんな空気で話を戻すのはどうかと思いますが、リグレット・・・いえ、ジゼルと呼び直しますがジゼルの賛同を得たとは言え詠師達やユリアシティの人間は納得しているんですか?その案に」
「えぇ。一度市長にユリアシティの代表となるであろう者達をダアトに呼んで、今の案にダアトのこれから訪れるだろう窮状を話したら予想外にすんなりと頷いてくれました。やはり現実的に物を見なければならなくなったのが効いていたようですね。特に資金面に関しては」
「今までは信者からの献金に頼りきりだったのがそれが出来なくなってきたのですから、それはそうなるでしょうね・・・」
そこでサフィールは頭を振ってから祝福の言葉を送りつつ改めて先程の流れに戻すように真剣な面持ちで質問を持っていくと、イオンが順調に話は済んだと答えたことに納得する。金がないと言うことがどれだけの物をもたらすかを理解出来た為に。
「それでなんですが、遅くとも三年程で僕達はダアトを商業自治区へと変えようと思っています。今後のダアトを手遅れにしない為にも」
「で、俺らもその後にはキムラスカを民主政治に切り替える為の準備に取り掛かるつもりでいるんだけど・・・そこでサフィールにはちょっとやってほしいことがあるんだ」
「私に、ですか?協力出来ることがあるなら協力するのはやぶさかではありませんが、今の私に出来ることなんてたかが知れてますよ・・・?」
イオンはまっすぐな目で今後の予定を告げてルークもその動きに併せて動く気だと告げるが、自身に協力をと言われてサフィールは首を傾げながら大したことは出来ないと返す。
「何、大したことじゃない。サフィールはピオニー陛下に言われてフリングス少将に付いてきたんだろ?色々少将が気にかけれない所を見て報告するためにさ。で、その時にちょっと言ってほしいんだよ」



「マルクトを残したいって思ってるんなら早く結婚して子供を作ってください・・・ってな」



「え?・・・それを伝えるだけでよろしいんですか?」
それでルークが協力の中身を軽く述べる訳だが、想像以上に簡単な中身に拍子抜けしたと言った様子でサフィールは目を丸くする。









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