必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「・・・成程、経緯はよくわかりました。しかし、本当に驚きましたよ。まさかそんなことになっていたとは・・・ちなみに1人目ですか?」
「あぁ、フローリアンにシンクがいるからね。あの子達がいるから結婚に関してはタイミングを見計らっていたんだ。こういうことは落ち着いてからがいいとね」
「そうで・・・シンク?」
それでサフィールは一応は納得して子供の数について問い掛けるが、またも笑顔で返ってきた答えに聞き逃せない単語を見つけて口を止める。
「あぁ、この事も言っていませんでしたね。シンクは生きていますよ、ヴァン達と一緒に処刑しませんでしたから」
「なっ!?・・・ま、まぁ話の流れからなんとなく想像はしていましたが・・・いざそう聞くと意外な物ですね・・・ただ何故シンクが生きているんですか?ヴァン達の配下は全員死んだように言っていたのに・・・」
その声にはイオンが答えサフィールは驚きに再び声を荒らげるが、言葉にされたから分かってはいたと強がりつつもそうなった訳を問う。
「・・・僕のわがままから、ですよ」
「導師?」
「・・・僕は彼に生きて欲しかったんです、彼にこの世界で」
「・・・それは、同じ人物のレプリカという引け目からですか?」
「えぇ、ですが僕では彼の気持ちを変えることが出来ませんでした」
「えっ、導師ではダメだったと?」
「・・・そうなります」
そこでしんみりとした様子でイオンが自分の気持ちからだと言い出すが、その結果は失敗とのことでサフィールは意外そうに驚く。今までの成功の流れが全く嘘のように通じなかったと聞かされたのだから。
「彼の心は頑なでした。僕の言葉だけでは揺り動かされないほどに。そして彼は言ったんです、『いい加減に諦めて自分もヴァン達のようにすれば?』と・・・それで説得が難しいと思った僕は一度引いてウッドロウさんに話をしていたんですが・・・そんな時、彼の心を動かしたのはフローリアンでした」
「えっ、またフローリアンですか?」
「僕達の話を聞いていた彼はシンクに会うことを望みました。話をするために。それでシンクと会ったフローリアンは言ったんです、『だったらなんで僕達が火山に投げ込まれた後、諦めなかったの?』って・・・そこからのフローリアンの言葉は僕達には出てこないものであると同時に、シンクの心を深く抉りました。イクティノスさんの言う分には事実殺されたも同然の身でもあるフローリアンの忌憚のない言葉が、色々言いはしても自分から死を選ぶことのなかったシンクには何も返せる物ではなかったからだそうです」
「・・・成程、同じ立場でありながら貴殿方が同じ境遇を過ごしてきた訳ではないと言うことをフローリアンは言ったわけですか。しかしよくもまぁ、そんな風に言えたものですね。おそらくフローリアンもどうすればシンクが黙るかを意図して言ったことではないのでしょうが、結果として彼を追い詰める最善の手となった・・・」
『それこそ無垢だから言えたことだろう。打算が少しでもあればシンクも反論してきただろうが、それが全くないから言葉に詰まり・・・フローリアンに圧されてしまったと俺は見ている』
「ただ純粋ってのも怖いもんだよな・・・後からその時の事を聞いて俺もヒヤヒヤしたぜ。それでよくシンクが爆発しなかったなってな・・・」
そしていかにフローリアンが意識せずしてシンクを追い詰めたか、それをありありと聞かされてサフィールは複雑な表情を浮かべイクティノスは自身の考えを淡々と述べルークは疲れた表情を浮かべ首を横に振った。







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