必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「ユリアシティも含めたダアトは自分達でどうにか資金を稼ぐ事がどうしても必要になるが、更に言うならダアトは国としての体裁を取るにはその土地の狭さもあって難しいと言わざるを得ない上に、もしこれから私達がいない時代に移った時に戦争になったりすれば国土を防衛するのも非常に難しいと言わざるを得ない。それこそ国土が狭いことに土地に上陸されれば守ることも難しい土地柄だからね。ダアトもユリアシティも」
「防衛の難しさ、ですか・・・言われてみれば納得ですね。元々ダアトは預言があってこそ他国の介入を避けてきた土地ですし、その預言が無くなった今は攻めてはいけない理由もありません。むしろキムラスカとマルクトの中間に属するその国土を狙おうと考える輩がこれから出てきてもおかしくはありませんね。どのような狙いがあるにせよ・・・」
ウッドロウは更にダアトが攻められる可能性もこれからは出てくると危険性を真剣に述べると、サフィールも納得はしつつも気遣ってか多少表現をぼかした言葉を漏らす。



・・・サフィールが言葉をぼかした理由。それはダアトが攻められる理由が多数にあるからだ。

今まで預言があったから不満に加えその土地を奪わんとする声は出てくることはなかったが、これからは違う。預言というダアトの最大の武器であり防具は無くなり他国からは攻めてはいけない理由はなくなった。むしろ様々な理由で攻めたいと思う者は出てくるだろう。

その一例を上げるならサフィールが言ったよう、キムラスカとマルクトの中間に位置するその土地をいずれ来る両国での戦争に備えて奪おうと画策する者がいてもおかしくはない。更にまた一例を上げるなら時が経てば例え戦争を起こす気はなくとも、立場を擁立していなければダアトが不安定な事に領土拡大の為に取り込もうとする輩が出てきてもおかしくはない。

その他にも上げていけばどんどんと出ては来るが、とにかく今のダアトは危険なのだ。立場が立場なだけに、これからは時間が経てば経つほどいつ攻められてもおかしくないほどに。



「その点でだが、商業自治区になれば話は変わってくる」
・・・しかしそんなダアトの危機を変えるべく、ウッドロウは考えを巡らせている。不安要素を出来る限り排除せんとして考えたとウッドロウは自信を覗かせた笑みで話を続ける。
「元々キムラスカとマルクトの物資の交流の流れがスムーズに出来ていたのはケセドニアがあればこそだ。その中立な立場を持ってしてのね。だがそれもあくまでケセドニアを介してでなければ両国の物資は行き交わないのが現実でもあるが、そこにダアトがその地を商業自治区として両国に開けばまた展開は変わってくる・・・ダアトのあるパダミヤ大陸は地図の位置的に言えばマルクトはケテルブルク、キムラスカはシェリダンにベルケンドといった街に挟まれる形で存在している。そして更に言うなら今上げた街は比較的ケセドニアから見ても遠い位置にある・・・そこでまたケセドニアとは別に、自由に商業が出来る地区がダアトに出来れば人々はどう思うと思う?」
「・・・それは国の利益に利便性を考えれば確かに得策にはなるでしょうが、そんなにすんなりと行くでしょうか?そうなるとなれば物資の流通を一律に司っていたケセドニアがいい顔はしないと思うのですが・・・」
「そこはケセドニアが払っていた上納金を免除する、という形で納得してもらうよ。元々その上納金の為にケセドニアは関税を高く設定していただろうし、それが無くなれば関税は安く出来る上に丸々とその金を徴収する事が出来る。向こうにとってもメリットがあることだよ・・・まぁまだいい顔をしないとなるならこちらも譲歩、と言うよりは条件をつけるつもりでいるよ。向こうもそうするつもりでいるだろうことを想定して、ね」
「っ・・・そう、ですか・・・(・・・この様子ではアスターという人物の事を見抜いた上でまた条件を出してくると確信をしているのでしょうね・・・本当にすごい方だ、ウッドロウは・・・)」
いかにダアトの地を活かし、いかに相手と向き合うのか・・・それらを余すことなく穏やかな笑みと共に語るウッドロウだったが、自身の疑問に抜け目も動揺なく答えるその姿にサフィールは改めて感心していた。とは言えそれを正直に漏らすような事はしないが・・・










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