必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「そう・・・ちなみに聞くが、今ユリアシティがどのような状況にあるか。それは聞いているかな?」
「ユリアシティ、ですか・・・私の聞いた所では新たに出来た交通の基点になったが、預言を秘匿にしていて倫理を考えること無く行動していたことが分かったことから、元々ユリアシティに住んでいた住民に対しての視線はあまり芳しい物ではないというようにお聞きしましたが・・・」
「あれ?そこまで聞いてたのか?住民に対する目が厳しいって」
「流れ着いた噂を一回聞いた程度ですよ。外殻大地が魔界に降りてから新たに出て来た地、それがいかような場所なのかとユリアシティに行った人からの噂を。まぁその理由も納得は出来ましたが」
「だよなぁ。元々の役目が役目だし元大詠師殿の行動もユリアシティが指示してたようなもんだしな」
それでウッドロウはユリアシティについて知っているかと問うとすんなり詳しい返答が返ってきた事にルークが意外そうに目を瞬かせるが、サフィールの理解してるとの言葉に背もたれに深く背を預け直す。
「まぁそれも以前であったなら特に大きな問題はないまま受け入れられていたのだが、今回はイメージが悪い状態でその姿を現した物だから人々の反感が一時期はすごかったんだ」
「・・・でしょうね」
ウッドロウはその話を続けてユリアシティの状況がいかなものだったかを説明し、サフィールもその激しさを思わせる言葉に重く納得をする。






・・・サフィールは聞いてこそいないが、以前のユリアシティも今のユリアシティと同じ状況になった。

とは言えそれはアッシュが王位についてから、すなわち混乱が起きだした後の事になるのだがその混乱も言ってみれば今のユリアシティが対面してる現状を更に酷くしたようなものだ。

そしてその酷い状況も言ってしまえばサフィールが言ったことに加え、元々預言を達成することに使命感を抱いていたユリアシティの住民の不満が爆発したが故の結果だった・・・預言の実態を知ったが故に気持ちを収め新たな生き方を選ぼうとしたのだが、元々預言の達成を目指していた者達。それが徐々に裏で世界を正しい流れを作っていたはずの自分達が罵られていく有り様に、住民が預言を遵守していたのはお前達だろうと自尊心を再燃させて言ったことで。

まぁそれは預言を盲信していた者達同士の醜い責任を押し付けあう五十歩百歩の争いなのだが、それまではユリアシティの住民も生き方を変えて目立った問題はなくやっていたのだ。と言うことはユリアシティもきっかけ次第ではうまく移り変わる事も出来ると言えよう。そしてその鍵を握るのは・・・






「私もそう言った事態を懸念してね・・・それでしばらく私はイオン君に頼んでユリアシティの指揮を出来るようにしてもらったんだ」
「あぁ、その事についても聞きましたね・・・一時に比べてユリアシティの人々の態度が変わり、評判も良くなったとか・・・まさか貴方が直々にユリアシティに向かっていたとは、そうなるのも頷けますね」
「お褒めに預かり恐縮、と言いたい所だが現状ではまだ一時的な処置を施したにすぎないんだ」
そんな状況を変えるために動いたと語り結果を出したウッドロウにサフィールは流石だと感心するが、満足してない様子で首を横に振る。
「元々ユリアシティはユリアロードという唯一の外郭大地に繋がる道を使って様々な物を交易する事で成り立っていた地だが、今となってはそのユリアロードを使えないことに加え地形の特性で船を使わねばそこまで辿り着くことも出来ない上、土地もそこまで広くもなく作物もまともに育てる事も出来ない・・・このような言い方はあまり好ましくないが、そのような土地では港としての役割以外を期待することは出来ないんだ」
「そこは流石に貴方もそうと判断する以外にありませんか・・・」
「あぁ、こればかりはね・・・だが問題として更に上げると宗教団体としての意味が薄れつつあるダアトには資金に援助物資を送り続けるには無理が生じる上、ユリアシティはダアトの治める地だ。その点でユリアシティはダアトがいずれ直面するだろう資金難の面で一番問題になる場所と言える」
「だからケセドニアのような商業自治区を目指さんとしているんですね?献金などに頼らず、自分達で資金難を解決するために」
「そういうことだ」
そして明らかにされたユリアシティにダアトの抱える問題、そしてウッドロウの目指す目的。サフィールもその目指さねばならない目的を聞き、重くその言葉を受け止めていた。









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