必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「導師、貴方もそれを聞いていたと言うのですか・・・?」
「えぇ、と言うよりはあらかじめ打ち合わせをしておいたことなんですよ。こちらも色々と問題を抱え込んでいるんでね」
「・・・その問題とは?」
そこで今度はイオンへと問い掛けを慎重に向けるサフィールに、打ち合わせた上で問題があると穏やかな顔のまま切り出す。
「まず一つはこちらもキムラスカと似たような身の上だということですよ。導師の血脈も元はと言えば被験者が死んだ時に途絶えたも同然で、あくまでも僕は死んだことを誤魔化す為の代替え品としての役割でした。しかし預言に沿わせる為の意向とは言え、歴代導師の血脈はキムラスカの王族より更に細々とした上で成り立っていました。もう預言が詠めなくなったとは言え、これ以上導師の血脈を頼りにして保持するには限界が生じてきています。例え僕がうまく次代への子を成したとしても、それから導師の血脈が続くという保証は全く出来ません。むしろ続かない可能性の方が高いでしょう」
「・・・そうでしょうね。もっと言うなら王政でないこともある上に預言という強制力のないダアトの状態から血を守るにも変に無理な事をすれば、人々の混乱に反発を招きかねませんしね」
「そう、それが二つ目になります・・・今のダアトは宗教団体としての位置に立っていません。今のダアトは混乱を避けるためにあくまで暫定的に僕らがまだ上に立って人々をまとめあげる立場にいますが、それもいつまで続くか分かりません。政治的な意味で立場を曖昧にしたまま事を進めてしまうと人々がダアトに対して不安を抱きかねませんし、かといって宗教団体としてのダアトの威光は薄れていることは否定できませんから無理な事を強いれば反発を招くことになるでしょう・・・この二つの問題は今のダアトにとっては大きな問題です」
「・・・確かに導師の言う通りでしょう。しかしその上でルークと話をしていたということはもしや、貴殿方も民主政治に切り替えようと言うのですか・・・?」
その問題とはキムラスカと似てはいるが、ダアト特有の問題と言えるもの。その二つを聞いてサフィールは納得した上で話の中身を先読みし、イオンに問い掛ける。ルークと同じ道を歩むのかと。
「いえ、正確には違いますね。ただこの事に関しては僕の発案とは言えませんので、ウッドロウさんから説明をお願いします」
「あぁ、わかった」
「ウッドロウの発案・・・?」
しかしイオンは違うと首を振ってからウッドロウへと話を振り、サフィールはそちらかと確認するようそっと呟きながら視線を向ける。
「・・・私は前に二人から話を聞いて考えていた。目下の問題を解決すればどこが後で一番不安定な立場になるかと。そして考えた結果、それはダアトだと私は思った」
「・・・まぁ貴方ならその事にはすぐに気付くでしょうね、誰かに言われるまでもなく」
「お褒めの言葉はありがたくいただいておくよ・・・ならばどうすればダアトの立場をいいものと出来るか?・・・それを考えた時に私は思ったのだ」



「ダアトを宗教による自治区としてではなく、ケセドニアのような商業における自治区にした方がいいのではないかと」



「ケセドニアのような・・・?」
・・・そしてそのまま話の流れからウッドロウにより、ダアトの目指さんとしてる所が発表された。商業自治区を目指さんとしていると。
サフィールは穏やかに交わされる会話から明らかにされたその目的に訝しげに眉を潜めるが、ウッドロウは表現を引き締め言葉を紡ぐ。
「実はそうしようと考えた最も大きな理由というのは、ユリアシティが関係しているんだ」
「ユリアシティ・・・?」
そして続いて出てきたユリアシティとの単語に、またサフィールは更に眉を潜める。








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