必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「・・・貴方の考えていることは分かりました。近親婚の危険性を問題として大きく捉えていることを。確かにこのまま何も変えずに行けばキムラスカの王族は複数子供が生まれてはその次代の子供同士で結婚させると、似たようなループで血族を無理に結婚させることでしょう。それは道徳的に見ればあまり望ましい事ではありません・・・しかしそれをインゴベルト陛下にファブレ公爵を始めとした貴族達が納得するものなのですか?今までそうやって血を守ってきたと言うのに・・・」
そんなルークにサフィールは道義的には納得はしつつも、キムラスカの人間的には賛成出来るはずがないのではと疑念の声を眼鏡を押さえながら向ける。
「そこんとこに関しちゃ父上と母上、叔父上にもさっきの話を言ってるよ。王家の血筋を守り続けることの是非もだけど、ナタリアの件で王家の信頼を失ったことを言ったら苦い顔こそしたけど俺の考えは悪くないって言いはしたな」
「元殿下の件で?」
「あいつが王族としての容姿を持っていなかったにも関わらず、預言を達成させようとした保守派の手を全く見抜けなかったことで少なからず信用がなくなってこんな風な話も流れてたらしいんだよ。『王家の血筋を重んじるにしては随分とお粗末な事をした。そんな存在が王族として長い間いれたんだから保守派がきっかけにしてもどうかと思う』ってな声がな」
「っ・・・そうですね、忘れてました。ナタリア殿下が偽者だったことを発表した余波というものを全く考えてませんでしたね・・・」
ルークはそんな質問にイケると語るが、ナタリアの事を再び出して訳を説明してきたことでサフィールは手をアゴに当て変えて失念していたと呟く。



・・・そう、ナタリアの事実を明かした影響とはルークの言ったように王家の不審を少なからず生んだことだ。これはナタリア本人が散々言っていたようキムラスカ王家は青い血を尊き物とし、更には赤髪緑目であることを貴き物としているのだ。なのにナタリアの事実を全く見抜いた様子でもなかったキムラスカ王家の信頼は落ちるのは仕方ない事ではあった。

ただ、仕方ないことではあったが・・・



「・・・ん?ちょっと待ってください。ルーク、もしや貴方それも加味した上で元殿下の件を明かしたのですか?」
「まぁな」
そこでふとサフィールが疑問に思ったことを視線を向けてルークに問うと、笑みを浮かべて頷く。
「俺だってどうなるかくらいは考えたさ。ナタリアがいなくなった影響をな。で、王家の影響もあることは十分あるって思った上でどう取り返そうかって考えた・・・そこで俺が辿り着いたのは、ナタリアのマイナスイメージ分を補うように俺が動けばいいって結論だ。そうすりゃ俺のイメージも上がるし、成功していけばいくほど発言力にも力が出てくるしな」
「・・・成程、策士な面を隠して動いていたという訳ですか。それでその元殿下の影響を利用して王家を終わらせる為の段階を踏ませたと」
「そう言うこと」
更にいかに自分が考えていたのかと語るその姿にサフィールは再び眼鏡を押さえつつ納得し、ルークはまた頷く。
「ただいきなりそんなことになんてするつもりは流石にないぞ。叔父上からいずれ地位を受け継いでしばらくしたら計画を煮詰めて発表する予定だから、まだそんなことにする訳じゃないから安心してくれ」
「・・・まぁいきなりそうすると言えば当然混乱するでしょうから、時間は必要でしょうね・・・ですが本当にいいんですか、このような重要な事を我々に聞かせて?」
「問題ないよ、イオンにはもうこの事を言った上で合わせて動くようにはなってるからな」
「・・・は?」
そこでまだ実行に移す気はないと言われサフィールは納得すると同時に重要過ぎることを簡単に言い過ぎではと言うが、ルークがあっさりと告げたイオンも知るとの言葉に呆気に取られ、イオンへと視線を向ける。そこにはニコニコ笑顔のイオンがいた。








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