必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「まぁ理由は色々あるけど、俺的に民主政治に移行しなきゃなんないって思った一番の理由はそろそろキムラスカ王族の血筋の維持が難しくなってきてるって思ったからだ」
「血筋の維持?」
「そ。今どれだけキムラスカ王族の血が流れてる奴がいるか、サフィールは言えるか?」
「・・・パッと思い付くのは貴方に公爵に公爵夫人、そしてインゴベルト陛下・・・と言った位ですかね。後は聞いたことはありませんが・・・」
「そう、それだ」
そこからルークが何故そう思ったのかを血筋の維持と語り、サフィールは問いを向けられたこともあって王族の血が流れる人間を思い出そうとするが数がいない事に鋭くルークが切り込む。
「これはマルクトやダアトにも通じることだけど、王族や導師の血筋ってのは大事にされた上で保護されるもんだ。何せ王や導師になるにはその血が必要になるからな・・・ただ比較的最近で言うとマルクトでピオニー陛下が皇帝の位置に就く前にその地位を争って、血で血を洗うような悲劇が起きたりすることもあったけどな」
「あぁ、その件ですか・・・今になって思えばあれがピオニー陛下が皇帝になったきっかけでしたね・・・」
ルークはそこからいかに王族や導師の血族の重要さを語るが、マルクトで起きた同族が相食む血生臭い事件を引き合いに出されサフィールの表情が少し複雑そうに歪む。
「ま、あんま気持ちよくない事件だってのは話を切り出した俺からしても言えることだ。何せ皇帝って地位に固執した上で王族同士で殺しあいが起きて、結果は遠くで関わりを持っていなかったピオニー陛下以外は全員死んでしまったんだからな・・・そうなってしまったのは皇位に就ける位置に何人もの候補者がいたからなんだが、それがなかったら今もマルクトには王族の血筋の人間は何人もいた可能性は高かっただろうな。その血筋の保全の為に・・・けど、だ。今のキムラスカにはそういった事件がなかったにも関わらず、主だった王族の血を引く人間は今サフィールが言っただけしかいない。傍系を紐解いたとしてももう王家に連なれるような人間は存在していないし、赤い髪を持って緑の瞳を持つ人間なんて尚更だ。そしてもっと言うならまともに子供を作ることの出来る人間は妥当な年齢で言えば、もう俺以外にいない・・・そんな状況で血筋を守ることが出来ると思うか?」
「・・・それは正直、不可能ではないでしょう。今までもそういった保全活動はしていたわけですからね・・・しかしこれからの事を思うと、絶対に大丈夫とも言えるとは思えませんね。元々キムラスカの王族も傍系を含めればそれなりに数はいたでしょうが、今となっては貴方以外に次代の子を為せる存在はいません。そんな状況でこれからもイケるとは言い切れる物ではないでしょう」
ルークも自身で苦い顔つきになりながらも話を進めていく内に表情を戻し、そこから話の核を聞いたサフィールも言いたいことは理解した上で同意を示す。これから王族の血を守ることは難しい事だろうと。
「だろ?もうこれ以上王家を続けるには無理が必要な状況なんだよ。それに血を無理にでも守るために父上と母上が結婚したって言っても過言じゃないし、母上の体調があまりよくなかった理由もその血を守るためって事が理由かもしれないしな」
「・・・血を守るためとは?」
「お前なら聞いたことがあるだろ。元々近親婚がなんで勧められた物じゃないかって理由・・・それは倫理観としてもだけど、血が近い者の遺伝子が混ざると奇形児みたいに異常な状態の子供が生まれることが多いからだって」
「あぁ、それは確かに聞いたことはあります・・・学術的な面で言うなら本来生物と言うのは異なる性の遺伝子を求める物で、その遺伝子を掛け合わせて正常な子供を作ることが出来るものです。その点で本来なら遺伝子の似通った近親者には普通はそのような感情を抱かないものです、同じ遺伝子を持った者を避けるためにもね・・・ですが王族の血を守るためにキムラスカ王家はあえて近親婚をする道を選ぶ以外になく、それで公爵夫人は生まれつき体が弱い体質で生まれてきた可能性が高いという訳ですか」
「そう言うこと。それに元々はと言えば『ルーク』と『ナタリア』って結構系譜で言っても相当近いはずの二人が結婚する事になってたんだ。ややこしい事情を考えずに言えば相当に血筋が近い二人が結婚するんだから異常を持った子供が生まれたり、なんだったら子供自体が生まれない可能性だってあった。まぁ今はそういった事はなくなったからいいとしても、これからは似たような事が起こりかねないんだ・・・そんな無理をさせてまで王族の血を守り続けることに意味はあるのかと、俺はそう思ったんだよ」
それからいかに血筋を守る為に無理が生じてきたのか、そうサフィールと会話をしつつ語りルークは真剣な面持ちで目を閉じた。







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