必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「ま、まとめて簡単に言うならナタリアの政策は政策って呼ぶのも拙い自己満足だったってことだよ・・・確かに金をばらまけば人は喜ぶけど、その実人の姿をちゃんと見ていない。そして満足と不満の境界線が極めて曖昧で、いつ割れるか分からない薄い薄氷の上に成り立った形でいたものだ」
「随分と手厳しい評価ですね。以前の事を考えれば確かにそうで・・・っ・・・成程、以前の事があるからこそそういう評価を下せるということですか」
「そういうこと」
更にルークはナタリアについての酷評を口にし、サフィールは途中まで言い過ぎではと言いかけるが以前の事を思い出し納得に変わった。
「前からして今の時間帯より後のナタリアは酷かったぜ?言ってみりゃそれまでは王女殿下って身分もあって意見を言っても叔父上って諌める立場にいる人間がいたし、多少はうまくいってる物なだけに修正も利かせることが出来た。けどアッシュと一緒になって政治の主導権を共に握ってからは相当のもんだった・・・何せ修正をかけようにも自分の失敗は失敗なんかじゃないってロクに失敗を省みようともせずに、更に高潔な理想だけを追求した無茶な案ばかりを出す・・・そんなもんだからより一層深みにはまる以外になかった。キムラスカの凋落って深みにな」
「・・・それも全て薄氷の上での出来事でそれまでは周りの助けもあってなんとかうまくいっていた、ということですか。そして手助けがあったから成り立っていた物を独り善がり、いえ正確には二人善がりにしてしまったから薄氷が割れてしまったと・・・実際に聞いてみると怖いものですね、一歩足場が壊れればそこまでのことになるとは・・・」
「まぁな。だからナタリアがもう一度復活って事態を避けたいのもあって、旧体制の改正の一番槍の槍玉に上げたけどな」
それで前の事を思い出しながら重い声で話すルークにサフィールも想像して身を震わせるが、だからこそ復活はさせまいとしたと口調を軽い物へと戻す。
「まずナタリアの政策に関してさっき言った不平不満の事を民に説明しつつ、福祉政策に関しては見直しをした上で改良案を出して実行した。代表的な事を言うならただ金をばらまくんじゃなく職がない人間に職場を紹介したりだとか、訪問介護をするようにしたりとかだな。後者に関してはそれも国から働き手を派遣したりして、更に働き口を増やすような形でな」
「それは聞いたことがありますね・・・以前のキムラスカでそのような積極的な民の事を考えた政策は出なかったと噂に上がりましたから、それは私の耳にも入りました」
「やるならとことんやるべきだし、中途半端に人の言うことを聞かず自己満足で終わらしちゃなんねーからな。だからこそ民の為に出来ることをやろうって思って色々考えたんだ。ま、最初はただ金をもらえなくなったり金をやるにしても配布金が少なくなったりなんて不満が出たのも事実だが、今となっちゃ結果として前より生活が良くなったって好評をもらってるぜ。比較対象となったナタリアには相当なダメージになったようだけどな」
「・・・現在彼女はどうしてるんですか?」
いかにこの三年でルークがキムラスカの福祉に関する問題に取り組んできたか。それをとうとうと語るルークにサフィールは納得はしていたが、ナタリアの行方は気になったようでどうなったのかと聞く。
「今現在は離宮に置かれてはいるようだぞ。流石に俺が行ったら確実に元の所に引き上げてくれって言われるだろうから行けないんだけどな」
「妥当と言えば妥当ですが・・・それで納得するものですか?それだけの我を持つ彼女が」
「それくらい織り込んで行動したよ。ちゃんとあいつが諦められるようにな」
ルークはその質問に正直に答えるとサフィールは納得はするが根本的解決ではないのではと聞いてきたので、皮肉げに歪めた笑みで対策はしたと返す。








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