必然は偶然、偶然は必然 第四話

そしてルークは語っていった、一言一句たりとも嘘のないファブレ公爵家にて起こったヴァンの襲撃をティアが起こした事を。



「・・・で、俺は侵入者のコイツを撃退しようとして剣をぶつけたら疑似超振動が起こってタタル渓谷に飛ばされたって訳だよ」
「成程、そうですか・・・はぁ・・・」
ルークから話を聞き終わり、イオンはわかっていたことだけにあくまでも疲れたような声を上げ失望した目線を向ける。
「ティア・・・貴女は何をやっているのですか?」
「い、いえ、これは私と兄の間の問題で・・・」
「貴女とヴァンに何があったのか、僕はそんなことを聞いていません。何故ファブレ公爵の家だからと言うことに限らず、人の家に強盗紛いのやり方で押し入って人を殺そうとしたのか・・・です。神託の盾とはそのように殺したい相手がいるなら人前である事も気にせず、軍人として得た技術を活用して周りの迷惑を省みず腕を振るってもいいなどと教えているのですか?」
「違います、そのような事はありません!」
「言葉はいくらでも飾れます、ですが起こしてしまった事実に基づく行動は言葉で飾っても変わる事はありません。ほら、事実は変わらないではありませんか。ファブレ公爵邸にいたヴァンを襲うために貴女は譜歌を用い公爵邸の人々を眠らせた、それも誰に許可を取るでもなく自らの意志で・・・これのどこに否定出来る要素があると言うのですか?」
「そ、それは・・・」
その目のまま静かに弁を述べるイオンにティアは違うと熱く声を荒げるが、事実のみを淡々と告げられ否定の材料を持たないティアはあっさりと戸惑い言葉を失う。
「そんな行動を取った貴女を侵入者として撃退しようとしたルークの判断は間違ってはいないものだと思います・・・まぁ貴女と疑似超振動を起こしたルークを謝罪の為にとバチカルに連れて帰ろうとしたまではいいでしょう。ですが何故そのような事を起こしているのに貴女は居丈高にルークと対等の言葉で話し、身分を無視した発言が出来るのでしょうか?普通は自分が起こした事を反省し、自分を下げるようなへりくだった態度に出るのが普通だと思うのですが?」
「い、いえ・・・それはルークが・・・」
「俺がそれを許した、とでも言いたいのか?言っとくが一回も俺はお前にタメ口を許した覚えはねーぞ。なのにお前はへりくだった態度なんか1度も見せる事なく、はなっからタメ口だったじゃねーか。許すも許さないもなくな」
「・・・っ!」
更に兵士ではなく人としての常識を問うイオンにルークが許した辺りの事を言い出そうとするが、ルークはすかさず前から思っていた謝るという態度とは程遠いティアの態度に突っ込みを入れる。その言葉にティアは睨み付けるようルークを見るが・・・
「・・・もういいです、ティア。まだ色々聞きたい事はありますが、取り合えず貴女にはこの場から退場していただきます
「・・・え?」
すかさずイオンは不愉快だと言わんばかりの声色で、その視線を止めさせ自らに持ってこさせる。



「ジェイド、和平に有用な材料を1つ与えます。ティアを捕らえていいですよ」







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