必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「言ってしまえばお金を渡すにしてもその者の事情を考えて調べた上で適正に判断しなければならないんだ。ただ金を渡すだけで喜ぶ者がいるかどうかもだが、無条件にお金をもらえることに横着をする者がいるかもしれないからね」
「・・・何か随分と実感がこもっているように思えますが、貴方はそう言った人物と対した事があるのですか?」
「まぁね・・・私は許可さえ取れば民が謁見出来るように取り計らい、その者の悩みなどが深刻な場合によっては私自身が動き調査に乗り出すこともしばしばあった」
「王である貴方自らが、ですか・・・?」
「何事も自分の目で確かめたい性分でね。とはいえ時間が出来た時にしか行けなかったし、信頼する臣下も多々いたから彼らに任せたこともあったけどね」
そのままこうするべきだったと上げるウッドロウに実感を感じたサフィールは質問をするが、王が自ら動くと聞いて軽く目を剥いて驚く。しかし当然の事と言わんばかりに笑みを浮かべて返すウッドロウだったが、また表情を憂いの物へと変える。
「・・・話を戻すがそんな風にしていると、私は虚偽の報告をして利を得ようとする者と対したことは何度かあった。それがまだ物事を多少大袈裟に伝えた程度ならまだよかった・・・しかし明らかに私や国を騙そうとして利益を貪ろうとする者もいたのは事実だ」
「・・・それで、貴方はその者達を処罰したのですか?」
「・・・あぁ、残念な事だがね・・・そうでなければ示しがつかなかったからね。王として悪事を露見したというのに、それを情けで見逃すなどしていいはずがない。上に立つ人間には総じて責任と言うものがある・・・そこで私心と驕慢で目を瞑るなどあってはならないことだ」
「そう、ですか・・・」
そしていかに自分が辛く、情を捨てた決断を時にしてきたのか。それでいて人を裁くという重荷にいかに耐えてきたのか・・・それを余すことなく言葉に含ませ語ったウッドロウに、サフィールだけでなくルーク達も沈痛な面持ちを浮かべる。
「・・・その点で彼女に対し偉そうな事を言うつもりはないが、あえて言わせてもらうなら彼女がやるべきだったことは自分自身がちゃんと人々の暮らしを見れるように下に降りていき、同じ目線で人々と接するべきだったと私は思うよ。彼女はその事に納得し、上の立場にいるままに事を終えてしまったのだからね」
「で、俺もそこまで聞いちまったからには色々調べようと思ってな。それでバチカルに戻って公務に取り掛かる傍ら、ナタリアのやった事について調べた・・・そうしたら出てきたんだよ。ナタリアのやったことに対する不満が」
「なんと・・・あ、いや。ある意味それも当然でしょうかね・・・そのような穴のある体制では不満が出てこない方がおかしいか・・・」
「その通り。そしてここで最も問題になったのは体制をちゃんと整えてなかったのもあって、ナタリアにそう言った声が届かなかった事だ・・・」
そこからナタリアが取るべきだった行動を指摘するウッドロウにルークが話を引き継ぎつつ不満の声があったと言い、サフィールは一度意外そうになりながらも納得の声を上げる。そして最もと問題を上げるルークの表情には疲れが宿っていた。
「・・・まぁこれはナタリアの名前だったり本人の圧力を気にしてなんだけど、出来る限りそう言った評判に不満なんかは言わせないようにしてたらしいんだよ。やっぱり散々金を使ってるのにそれが不備があるなんて聞こえが悪いし、発案したナタリアの責任問題になるのを避けたかったみたいでな。特に後者に関して本人に言ったら余計に事態をこんがらがせかねないから、めちゃくちゃ気を遣ったようだけどな。尻拭いを担当した奴らは」
「・・・元殿下はプライドは大層高かったそうですからね。失敗を認めたくはないでしょうし、元々の不備からそうなったと配下から言われればより機嫌を損ねる可能性は高かったでしょう。貴殿方が余計なことをしなければそれでよかったのに、くらいはいいそうですね」
「だと思うぜ、まず間違いなくな」
そしてナタリアの行動にいかな苦労が発生していたのかを語られるとサフィールはバレていた場合の行動を仮定し、ルークは肩をすくめながらだろうと予想に同意した。








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