必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「まぁそんなことは置いといて席につけよ、サフィール。立ちっぱなしもなんだしな」
「・・・そうですね、そうしますか」
ルークはそんなやり取りにまず座れと自身もテーブルに近づきながら席を勧め、イオン達もテーブルに各自着いていったことでサフィールも従い余っていた席へと座る。
「・・・改めてお久しぶりですね、二人とも。見違えましたよ、特にアリエッタは」
「まぁ3年もありゃ色々変わるだろ」
「そうですよ、サフィール」
全員が腰を据えたので再会の挨拶を対面の二人に向けてするサフィールに、二人は穏やかな笑みを浮かべて当然のように返す。
「それよっか俺的にはお前のその姿の方が見違えたけどな」
「それは導師にも言われましたよ」
対してルークもその姿に対してニヤニヤと笑みを浮かべ、サフィールは苦笑気味に対応する。












・・・それからルーク達は時が過ぎるのも忘れ、会話を楽しんだ。
「・・・時にですが、今現在キムラスカの様子はどうですか?」
「キムラスカの様子、ねぇ・・・」
・・・そんな時にサフィールが機を伺ってキムラスカの事を聞いてきた事で、ルークの表情が少し考えこむものに変わる。
「・・・ま、よくも悪くも体制は変わっちゃいるな。その点で色々淘汰されていってるものもあるけど、ゆっくりやってってるよ」
「旧体制とはまた何か大きな物とお見受けしますが、まさかそれはインゴベルト陛下の事ではございませんよね?まだ王座にいらっしゃるのでそれはないかと思いますが・・・」
「あぁ、それか?」



「ナタリアの事だよ」



「っ、ナタリア元殿下が何故そこで・・・?」
それで少しして考え込んでルークはなんでもないように切り出しサフィールが更に何なのかと追及すれば、ナタリアと出たことに意外そうに目を瞬かせた。
「んじゃちょっと色々質問しながら説明すっけど、ナタリアが民に人気のある王女様だったってのは知ってるよな?」
「・・・まぁそのくらいは知っていますが」
「んじゃ次に聞くけど、ナタリアは貴族の間で評判があまりよくなかったってのは?」
「それは聞いていませんが・・・まぁ想像に難くはありませんね。インゴベルト陛下の命を気にせず城を抜け出す我の強さからして、貴族に対してもまた一層言いたいことはハッキリと言う姿は容易に想像出来ますから、余程のナタリア主義者の理想主義者でなければまず貴族はなびかないでしょう」
ルークはそこでサフィールに答えに繋がる質問をすると、対するサフィールから出てくるのは淡々とした貴族間の評価は低いだろうことの予想である。
「んー、それも確かにあるけど答えに関しちゃもうちょい足りないな」
「ではその答えとは?」



「あいつがやってた福祉政策がその実、あいつ一人でやってたんじゃ成り立たない穴だらけの政策だったからだよ」



「穴だらけ・・・?」
しかしルークから首を横に振られてから最も得意として担当していたはずの福祉政策の件についてと言われ、サフィールは首を傾げる。
「ま、これは終わったことって言うのとサフィール達にだから言うんだけど・・・ナタリアがやってた政策ってのは例えて言ってみりゃ花火を打ち上げるだけ打ち上げるなんて言っといて、ナタリア自身はそんな花火の作り方をよく知らずにいるから見よう見まねで作ろうとしてたもんだ。けどそれは資金が莫大にかかる上に大した成果を上げれないひょろい花火にしかならないのは目に見えてるから、キムラスカの臣下がそれをちゃんと立派な花火に仕立て上げた・・・ただそこで問題が起こる。その花火を作ったのは実質その臣下なんだが、元々草案にならない草案でも案として出したのはナタリアなんだ。王女殿下が関わってるのに、その花火を作ったのは私ですなんて臣下が言えると思うか?」
「・・・いえ、言えると思いませんね。しかしナタリア元殿下は華麗な花火が作れた事に満足するばかりで、そう言った苦労を些事として見ていたと言うことですか」
「いや、些事としてどころか余計とでも思ってたんじゃねぇか?だってその花火で民が喜んだならもっとやればいいって更に金をかけようとしたらしいからな、何とか苦労して調整をしてそれが実現出来るくらいの物にしたと言うのに国で使える資産をもっと使いたいってな」
「それは・・・貴族どうこうではなく人として許せない領域に入りかけてますよ。散々神託の盾で研究資金をもらってきた私が言う筋合いはないかもしれませんが・・・」
それでルークが場にいる人間は特別だと花火を用いた例えで説明をすれば、サフィールはあまりにも傲慢で無恥なその考え方に首を横に振る。








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