必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「・・・しかし残った情緒不安定とは、一体どう言うことでしょうか?今の話ではそこまでの事は出てきていませんが・・・」
「それはその後の事ですが、トリトハイムが詰めたそうです。それだけの事を勝手に胸に秘めていたことに加え、ファブレ邸を襲ったことを改めて。それで兄を止めるためにやったことで迷惑はかけたがそこまで言われることではないと返したそうですが、そんな向こうの立場の事や法律の事を全く考えていないその在り方にトリトハイムも滅多にないほど怒り滔々とそれらを理論攻めで突きつけたそうです。これは他の詠師達から聞きました」
「トリトハイム詠師が、ですか・・・あの方がそこまでになるとは、相当だったようですね・・・」
「はい、僕も驚きましたよ」
だがと情緒不安定の部分に話を振るサフィールだが、その流れに出てきたトリトハイムの怒りに驚きを隠すよう眼鏡を押さえる・・・普段は極めて平静に努めていて、そこまで激怒するような人物ではないと思っていた為に。
「ですが反目していたルークや今となってはとりつくしまのない対象となってる僕よりはトリトハイムの言葉は聞いたようで、流石にティアもその理論攻めで表情を青ざめさせていたそうですよ」
「・・・話を聞けば相当物の見方の偏った人物のようでしたが、ようやくトリトハイム詠師の言葉で受け入れざるを得なかったようですね」
「ティアにとって自身にとって身近かそうでないか、それが判断基準だったからでしょう。身近だと思ったなら自分の意見を通せる、身近ではないなら出来る限りへりくだる・・・と言った具合にね。僕にはその点言葉遣いはへりくだってはいましたが、おそらく身近な存在だと思っていたのは間違いないでしょう」
「ですがトリトハイム詠師は立場と共にあまり身近ではないと感じたから、と言うことだと・・・」
「だと思います。そしてそこからが情緒不安定という部分になります」
そのトリトハイムからの言葉は相当に聞いたようだと語られサフィールはようやくかと呟くと、身近かどうかが人と接する判断基準だろうと言ったイオンは続けて情緒不安定の部分だと言う。
「その後トリトハイムはもうこれ以上話を聞く意味はないと、話を切り上げようとしたそうですが・・・そこでティアは必死に騒ぎ立てたそうです。もう二度とそんなことをするつもりはない、だから神託の盾として復帰させてほしいと」
「それは許される訳ないでしょう。導師に詠師陣までもからハッキリと神託の盾を辞めさせると言ったのですから・・・ただモースがいたなら容易に覆しそうではありますがね、ヴァンを刺した時のように」
それでイオンから尚トリトハイムに神託の盾に復帰を願っていたと聞き、サフィールは今となっては無理だろうと呟く・・・それこそモースがいたなら自身の権限をフルに発揮してティアの罪を実質ないものとしていただろう。
「えぇ、確かにいたならそうしたでしょう。ですがその過去のヴァンを刺した件で当人にあの樽豚が何とか揉み消しを図った事でなんとか神託の盾に在籍出来たが、その事をおくびにも考えたことがなく先程上げた罪すらどれ程のものか理解していないお前に情けをかけるつもりはないとトリトハイムが言ったら、衝撃を受けた後力なくうなだれヴァンやルークなどへの色々ブツブツと口にし出したそうです。代表的な所で言えば兄さんがあんな事を考えなければ私もこんなことはしなかった、ルークが私を信じてさっさと事実を言えばよかった、兄さんなんでこんなこと、教官が兄さんの所を離れてルークの所に行くなんて有り得ない、兄さんがあぁなったのはルークのせいだ・・・」
「待ってください!・・・正直それ以上聞きたくありません。情緒不安定なのはわかりましたからそこまでで結構です」
「そうですか、わかりました」
そしてその意見に同意してトリトハイムが拒否を示したと言いティアのその後の異常になった後の言葉を次々述べていくイオンに、たまらずサフィールは大声で制止を願った。ティアの放った言葉を代わりに放つイオンの言葉が、あまりにも狂気に満ちていた為に。だが対照的にイオンはあっさりとその言葉に頷き、言葉を止める。









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