必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「こちらとしては後腐れのないようにしたかったのですが、先を考えず行動してしまえば余計に面倒な事になりかねなかったのですよ・・・まぁそれも終身刑という向こうにとってギリギリの妥協点を条件にしたことで黙っていただきましたけどね」
「妥協点、ですか・・・目に浮かびそうですね、彼らが苦い表情をしながらもアニスが生きているならと言う姿が」
・・・だからこそ妥協せざるを得なかった。
仕方ないと語るイオンにサフィールはタトリン夫妻の心境を想像して首を横に振る。
「サフィールの言った通りです。実際に彼らはそう言いました。ですが元々アニスの罪は死罪にして当然の物・・・ですので彼らには死罪にしない代わりの条件をつけました」
「条件、ですか?」
「えぇ。彼らのアニスへの差し入れを含めた一切の接触の禁止に加え、もしアニスが脱走などの罪から逃げるような行動を取ろうとしたなら弁解をさせることなく命を奪う・・・とね」
「ん?・・・接触禁止はともかく、導師はアニスが脱走するような可能性を感じているのですか?」
その予想が正解と言いつつ終身刑にする際に条件を出したと言うイオンだが、脱走と聞きサフィールは首を傾げる。
「いえ、僕はアニス単体でしたら脱走するとは思いませんでしたよ?・・・ただあの二人に最期の面会をさせたらどうなるか、と思って面会はさせましたけどね」
「最期の面会?会わせたのですか、アニスにタトリン夫妻を?」
「えぇ、せめて最期に一回と嘆願されたのでその後に機会を設けました・・・その結果、アニスは激昂して二人を追い返しましたけどね」
「激昂?アニスは何を・・・?」
だがイオンも可能性はないと否定しつつ面会させたと言うと、サフィールは出てきた激昂との言葉にまた首を傾げる。
「何、簡単な事です。アニスにとっての謝罪になってない謝罪を平然と向けられたからですよ・・・自分達のせいでお前には迷惑をかけたが、なんとか終身刑にしてもらえるようにした。もう会えないが元気でいてほしい。借金はちゃんと返すから・・・とね」
「っ・・・それは、アニスの心境からすれば何を今更と言うのにと偉そうにと言う入り乱れた考えが浮かびそうですが・・・っ、導師まさか貴方それを予想して・・・!?」
「今だから言いますが、正直なるだろうとは思っていました。それも相当高い確率で」
そうなった理由を言うイオンに最初は確かに納得するサフィール・・・だが今までの会話内容を思い出しそれを見越してたのではと目を見開きイオンに問い掛ければ、正解と晴れやかな笑みを浮かべた。
「僕から見てタトリン夫妻がアニスに対して見せる姿勢には、一貫して親だから上位は自分達なんだという考えが根底にあるように思えました。これは親が持つ考えとしてある意味で当然ではあるとは思います・・・しかし彼らは以前でもそうでしたが本当の意味でアニスより下に立って謝罪をしたことも、アニスと同じ立場から何かを考えようとしなかった。そんな彼らがアニスに会えばどうなるか・・・そう考え面会を許可したんです。タトリン一家、特に夫妻に本当の意味での後悔を植え付けるためにね」
「・・・っ!」
そのままの笑顔でいかにタトリン夫妻がアニスの事を考えていなかったのかを自分なりに述べ、その上で面会は後悔を招くためと言い切ったイオンにサフィールの顔は驚愕に静止しきったままになる。









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