必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「・・・ウッドロウ、この際ですからお聞きしたいのですが貴方からしてガイの行動はいかように見えましたか?」
「ガイの行動、か・・・」
そこでふと視線をサフィールはウッドロウに向け感想を求めれば、少し考え込む様子を見せる。
「・・・彼に気のおける仲間と呼ばれる人間がいなかったという点が、復讐に邁進した原因だと私は思っている」
「仲間、ですか?」
「あぁ、彼にはペールという彼の心を汲む臣下はいても本当にそれをたしなめるような事はなかった。ヴァン謡将に関してはガイに真実を明かさなかったことから仲間とも同士とも呼べぬ間柄だ・・・私もかつては国の王であった父を殺され国を乗っ取られた経験があるが、その時私の周りには立場の壁を越えた仲間がいた。彼らがいなければ私は復讐の念に囚われ、グレバムを私怨で打倒していたかもしれない・・・その点で彼と同じ目線に立てて諌めの言葉をかけられる誰かがいなかった事が、彼の不幸だと思うよ」
「・・・成程、対等な立場からの言葉がなかったからこそガイは思い直すに至らなかったと言うことですか・・・」
『少々訂正を入れたい。正しい言葉を送れる仲間だ。そうでなければ意味がない以上に間違った方向に向かうぞ。現にティア達と同調して道を外しただろう、ガイは』
「イクティノス・・・」
そして考えをまとめ仲間が必要だったと自身の体験も添えて語るウッドロウにサフィールも納得しかけるが、イクティノスが訂正の声をかけたことに三人から注目が集まる。
『仲間と言うのは仲がいいのはいいことだが、馴れ合いで正邪の判断をまともにせず肯定しあうだけの仲はむしろ害になるだけだ』
「厳しいですね、イクティノス・・・」
『だが事実だ。そう言った仲間がいなかった事がガイの命運を決めた・・・ウッドロウが言いたい事はそういうことだ』
「・・・そう、ですね・・・確かにまともな道に導ける仲間がいなかったことは、ガイにとっての不幸だったのでしょうね・・・」
更に続けて辛辣に仲間のあるべき形を述べたイクティノスにサフィールも最後にはしみじみと納得するに至る。



・・・ガイにとっての不幸はウッドロウ達が言ったよう本当に間違っていた時にたしなめられる仲間がいなかったことだ。ちゃんと周りに目を向けるような言葉を言えたり、復讐を諌めるように告げられる同等の存在がいたならガイも方向転換が出来た可能性があった。

しかしガイの元にいたヴァンとペールが程度の差はあれ協力した上で、ヴァンはともかくとしてもペールが諌める言葉を向けずにいたことがその命運を決定させた。もし幼い内にちゃんと二人からでなくとも言葉を向けられていたなら心変わりをしていた可能性がある・・・だがもう意味のないことだ、ガイはガルディオスとして二度と浮き上がる事も出来ないままこの世を去ったのだから・・・



「・・・もうやめておきましょう、ガイの事はこの辺りで。その代わりと言ってはなんですが、今度はこちらから質問をしてもよろしいですか?」
「えぇ、いいですよ」
少しして頭を振り話題の変更を切り出すサフィールに、イオンは快い笑顔で頷く。
「ではまずお聞きしますが、ダアトでは導師守護役はもうつけるのはやめられたのですか?」
「えぇ、アニスを始めとして導師守護役があの樽豚の息がかかっている件があってから見直しを図ったんです。その過程でこれより導師守護役にそこまで人数を割くのはいかがなものかと思い、僕がウッドロウさんを始めとして交代制で誰かをつけると決めた事で導師守護役をつける制度は廃止にしました」
「そうですか・・・では導師守護役の娘達は今どのように?」
「樽豚の手がそこまでかかっていなかったことから、ほとんどの娘に家族達は特におとがめもなく済ませました。その後は軍部に彼女達の配属先を決めてもらい、導師守護役からの引き継ぎも穏やかに終わらせました・・・ただ一部例外はありましたけどね」
「・・・成程、タトリン一家ですか」
それでサフィールからまずはと質問されたのは導師守護役が見えない件についてで、廃止したと言うと共にほとんどは罰を与えなかったとイオンは答えたのだが明らかに含みを持たせたその声にサフィールは嫌でも理解した。タトリン一家の事だと。







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