必然は偶然、偶然は必然 epilogue

・・・元々生存しないと思われていたガルディオスの生き残り、これはガイが現れなければそれこそそのままガルディオスの名は悲劇の一族として名を残していた事だろう。それは生存の見込みがなかったからであったが、更に加えて言うならもし生きていたならと淡い希望をあてもなく持っても何にもならないと示すためでもあった。

しかし以前はガルディオスの遺児としてガイは表舞台に出てしまった。それが故にピオニーは考えたのだ。どうやってガイをマルクトの人々、特にホドの生き残りの者に受け入れさせるかを。それが故にまず段階を踏んでガルディオスの遺児はちゃんと出来る人間なんだと受け入れさせようと皇帝の身の回りの雑事から始まった訳だが、そんな段階を一足飛びに越えてしまう大功を立ててしまったことが皮肉にもガイの立場を一層高いものへと押し上げてしまった・・・そうしてしまった理由とはエルドラントを宙に上げたヴァン達を倒した一行のメンバーとなったことだ。

もしアブソーブゲートの時点でヴァン一味が完全に沈黙していたのなら、そこまで一足飛びにガイは英雄として名を残すこともなかっただろう。言ってはなんだがその時点でそこまでガイは名は売れておらず、ガルディオスに戻ってきたとくらいしか認識されていないことから。

・・・図らずも英雄の一行として名を残したことがガイの成長を妨げると共に、マルクトの上層部の人間として名実扱わなければならなくなった。ピオニーの思惑を越えて。おそらく当時のピオニーはそれを望ましい事だと思っていただろうが、今は違う。今のガイはピオニー以下のマルクトの上層部にとって、分もわきまえずただガルディオスの名を都合よく用いる厄介者にしかなり得ない人物なのだから。






「・・・おい、もう連れていけ。これ以上何か言う必要があるようにも思えんし、言っても無駄だろうからな」
「はっ、ではいつに始末をつけますか?」
「明日にでもしておけ。それとおそらくルークという人物は勘づいてるだろうが、一応の配慮も含めて導師経由でペールとやらのことは伝えるようにしろ。ファブレやキムラスカ全体にこの事を知らせたなら、変に戦の火種を作りかねん事態になり得るんでな。二人ならこの事を理解して動くだろう」
「わかりました」
・・・ガイは今生においてはもうマルクトの貴族に戻ることなど出来ない所か、その命すら終わる。
ピオニーが場の収束をするべく立ち上がってガイの始末を皮切りに、後の対応を臣下達に述べていく。しかしガイは最早何も言うことも出来ず、ただ机に頭を突っ伏したままであった・・・


















「・・・とまぁ、その場の後の翌日に秘密裏に処刑をされたようですよ。もう抵抗する気力すらも何も見せぬ状態でね」
「そうですか・・・」
・・・そして時間と場は戻り、現在のバチカルに向かう船上。サフィールは事の経緯を語り終わり、イオンも納得したように一つ頷く。
「ちなみに一つお伺いしますが、ペールという従者の件はどうなったのですか?マルクトに来たと言った報告がなかったので、どのようなことになったのかわからないのですが・・・」
「あぁ、それはファブレ邸から暇を自主的にいただくと言ったことで決着がついたとルークから手紙を受けました。僕の手紙と共に同封したマルクトからの手紙を見て、愕然とした様子で何かを悟ったよう自主退職を切り出したそうです。今頃どうしているかは僕やルークにも分かりませんが、おそらく自分一人でもファブレを襲うなどというような暴挙は行わないだろうとルークは見ているようです。事実この三年でそのような素振りなどないらしいですからね」
「・・・そうですか・・・」
それでサフィールは聞いてなかったからと話題にペールの事について聞くと、行方不明だが大丈夫だろうとここにいないルークの分も含めてイオンは笑顔で返す。サフィールはその答えにそれ以上は何も言わず、ただそこで納得するに留めた。








17/50ページ
スキ