必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「これはお前が当時幼かったことを差し引いたとしてもガルディオスの一族としての責任を放棄した行動と言わざるを得ないぞ。何せ生き残った民達にマルクトの貴族という立場を全く省みず、復讐という個人の感情だけを優先したんだからな」
「そ、そんな・・・お、俺はそんなつもりでマルクトから離れた訳じゃない・・・それに、ペールはそんなこと、一言も言ってくれなかった・・・」
「ペール?・・・誰だそれは?」
「え、あ・・・その、ガルディオスに仕えていた従者、です・・・今は俺と一緒にファブレに入って、庭師として活動をしています・・・」
「ふぅ・・・そうか」
そんな考えを批難するよう言葉を向けるピオニーにガイはそんなつもりはと言い訳をするが、ガイからペールという名が出たことに言えと命令の強さがこもった声を向ける。その声にペールの詳細を恐る恐るガイは述べるが、ピオニーは目を閉じ一層失望したとタメ息を吐き頭を抱える。
「・・・お前がペールとやらを責めるのは筋違いだぞ、ガイ」
「えっ・・・?」
「お前からすればそれを教えてくれなかったペールが間違えていたとでも思っているのだろうが、元々復讐という行動を選択したのはお前だ。貴族としての責務を果たす事を教えなかったのは臣下としていかがなものかという点は確かに見受けられるが、主の考えを尊重したばかりか手伝いまでしてるペールとやらが全て悪いなどと擦り付けると言うのは無責任以外の何物でもない。それにそうやって臣下が悪いと責任を擦り付けることが自分の価値をどれだけ下げているのかわかっているのか?」
「っ!・・・それ、は・・・」
それで目を開けいかにそれが自身にも責任があるかと主としての器量の事をピオニーから告げられ、ガイはたまらず息を呑み視線をキョロキョロとさせる。
「・・・まぁペールとやらがお前にちゃんと進言しなかった件に関しては置いてやろう。だがそうやって復讐をしようと身を投じたお前は結局ホドの民やマルクトの事など考えることがなかったばかりか、命惜しさにアスランにガルディオスの名を用いて延命の訴えまでしてきた・・・これのどこにお前がガルディオスとしての責務を果たしたと言える?・・・そんなガルディオスとしての立場を捨てたばかりか、その名を利用している有り様のお前をガルディオスと認めるつもりはない。そしてこれは俺だけではなく、この場にいる重臣全ての意志だ」
「!!」
ただもうそれはどうでもいいと話を核心・・・ガイをガルディオスに戻すことはないと重臣一同全ての意志も含めた結論をピオニーは荘厳に告げた。ガイはその言葉に絶望を浮かべた表情を浮かべるが、ピオニーは更に無表情で続ける。
「本来ならガルディオスの遺児がいたという事は喜ばしいことだが、経緯が経緯な上にこれからの国交を考えれば事情を知る当事者のルークに導師を相手をしなければならないからな。だからこそ先に言っておくがお前のことは内密に処理することにした。下手に情けをかけて自由の身にして、ファブレやルークという人物に会われたなら面倒になりかねんのでな」
「そっ、それは!・・・も、もう俺は、死ぬ以外にないんですか・・・!?」
「そう言っている、これはもう決定事項だ」
「・・・っ!」
そして冷たく告げたのは面倒を避けるための死を予測させる中身で、ガイはその中身を正確に受け取りガタガタと青い顔で体を震えさせださせた。
「・・・こちらとしてもお前がさっき言ったように早々とマルクトに戻ってきてもらったなら、ガルディオスとして復帰させることも出来ただろう。生き残ったホドの民をまとめる立場の人間としてな・・・しかし今となってはガルディオスの一族が生き残っていたなどと言えるはずもない。このような体たらくを見せる者が改めて自分の上に立つなどとなればその者達の失意を招くだろう上に、いかに秘密と言われても生存を漏らす者がいてもおかしくないんでな」
「っ!・・・そん、な・・・なんで・・・なんで、こんなことに・・・」
更にだめ押しと早く戻らなかったからこそガルディオスの遺児としての存在は明らかに出来ないとホドの民を引き合いに出すピオニーに、ガイは厳しい言葉に耐えきれなくなったようで机に顔面から突っ伏し焦点の合わない暗い瞳でブツブツ呟きだした。








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