必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「何故、と言いたそうな顔をしているが当然だろう。普通に考えてみれば行方不明となった者というのはどんなに長く見たとて、5年やそこらが精々生きて戻ってくるのが限界とされる時間だ。ただガルディオスの人間という特殊な状況下で生き残ったと言うのなら、その血筋から何か事情があってしばらく出れなかったのではと事情があったのだと多少鑑みる余地は出てくるだろう。しかしそれもお前が確かに生きていると言う連絡なりをして生きている確証がついての物で、それも10年が限界だ。流石にそれ以上となれば生きている可能性など皆無と思う以上に、例え生きていたとしても国に戻る気がないと見なすのが普通と見るだろうからな。ましてやれっきとしたガルディオスの者と証明出来る物を見せられない奴をガルディオスだなどと認める訳にはいかん」
「っ!・・・それ、は・・・」
ピオニーはそこからいかに名乗り出る時間が重要なのか・・・そう語った上で証拠がないことがガルディオスと認められないと告げれば、ガイは苦々しく表情を歪める。



・・・そもそも前にガイがガルディオスに戻れたのはシンクにかけられたカースロットにより状況的にガルディオスだと明かさねばならず、その上で大きなウェイトを占めていたのはジェイドがそれをハッキリと認めて働き掛けをしてしまったからだ。

その時の状況から見たならガイはガルディオスに戻すべき、いや戻さなければならない状況だった。全員が親身に悲劇的なガイの味方に立ったが故に。

しかしそれも元を思い返せばピオニーの信頼が厚いジェイドの言葉だったからこそ、マルクトもピオニーもガイのガルディオス復帰を認めてしまったからだ。本来だったならガイが異例中の異例とも呼べる処置を取られてまで復帰が出来たなどとはあり得るはずがないだろう。ガイからすれば人の不審な点に注目点を向けやすいジェイドに、ティア達といった身内に甘い人間が周りにいたことがその点で幸運と言えただろう。そうでなければマルクトに復帰など、一朝一夕には出来なかっただろうが故に。

・・・そしてガルディオスの事を少なからず気にしていたが故にピオニーが始めは気を使ってブウサギの世話から来る雑用をさせていたことなど、ガイは知るよしもないだろう。自分はガルディオスに返り咲け、ピオニーの近くにいれるということで勘違いして・・・



「それにだ・・・今更どの面下げて元ホドの人々に顔を合わせられると言うんだ、お前は?」
「えっ・・・ホドの民は生きていた、と言うんですか・・・?」
「全員生き残っているわけがないだろう。かろうじてホドから命からがら逃れた民もいたんだ。そんなに人数は多くはないがな」
「そう、ですか・・・」
表情を歪めたその姿に続けざまにホドの民とピオニーは告げ、ガイは呆然と声を上げるがすぐに数は多くないと訂正されはして、それでも多少ホッとしたように声を上げる。
「・・・何故お前が安心したような顔を出来る?」
「・・・え?」
だがその姿にピオニーは冷めた目で視線を向けつつ心底からの疑問の問い掛けに、キョトンとした表情を向ける。
「そうだろう。戦争になったという点で見ればマルクトの上層部にもホドの地に人民を被害に遭わせた責任は多大にある。しかしだからこそ生き残った者達を保護したり、故郷から離れ別天地で生活をするための補償を俺達は行ってきた。それは俺達の責任だからだ・・・だがお前はその間何をやっていた?ガルディオスという立場にいた人間がマルクトに顔を見せなかったばかりか、やっていたことはファブレの人間に復讐するために相手の屋敷に潜り込む・・・それが上の人間が取るべき責任、ましてや領主の一族であった人間が取るべき行動だと言えるか?ホドの民であった人間に対してだ」
「っ!?」
そして続けたピオニーのガルディオスの人間としての責任を問う言葉にガイは考えていなかった、そう言っていると示すかのよう顔の穴という穴全てを大きく開き静止してしまった。










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