必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「・・・ですがジェイドを失う事を受け入れた事が様々な意味で私の立場に精神を確立させてくれました。そうしなかったら今頃私はまだどうするべきか迷っていたかもしれません」
「そうですか・・・それはよかった」
・・・そんな経緯があったからこそ、サフィールは今ここにいられる。サフィールの達観した落ち着いた様子に、イオンも笑みを浮かべる。
「・・・あぁ、そうだ。この際聞きたかった事があったのを一つ思い出しました」
「聞きたかった事?」
そんな時ふと思い出すように声を上げたイオンに、サフィールはおうむ返しで首をひねる。
「えぇ・・・もし貴方が知っているならでいいのですが、ガイがどのような結末を迎えたのかそれを教えていただけないでしょうか?彼はその立場もあって公に出来ない存在でしたからね」
「ガイ・・・あのガルディオスの遺児について、ですか・・・」
そこで出てきたのはガイの話題で、サフィールはその名に少し考え込むように手を口につける。
「・・・えぇまぁ、私も一応事情を知っていた身ですからフリングス少将からお話をしていただきました。ただ又聞き話で貴殿方も関わっていたとは言え、その話をするのに無条件と言うのは少々はばかられる物があるのも事実・・・ですので貴殿方も後で私の質問にお答えしていただけるのであればお答えしますが、いかがですか?」
「成程、交換条件と言うわけですか。貴方も中々したたかになりましたね、サフィール・・・わかりました、それで構いませんよ」
そして手をどかしたサフィールから出たのは後でこちらの質問にも答えればとの条件の提示で、イオンは愉快そうに笑みながら了承する。
「そうですか・・・ではお話しましょう、ガイと言う人物に何があったのかと言うことを・・・」
その返答にサフィールは話を始める、ガイがいかような目にあったのかの話を・・・


















・・・三年前のグランコクマ、謁見の間ではなく軍部の中の会議室の中。ここにピオニーを上座に据えたフリングスを始めとした軍人や貴族達がテーブルを囲み、ある存在が来るのを待ち構えていた。
‘ガチャッ’
「・・・来たな」
「失礼します。ガイ=セシル、牢より連行してまいりました」
「あぁご苦労・・・そこに座らせろ」
「はっ!」
「・・・っ!」
そんな場に繋がる扉が開かれ、マルクト兵士がある存在・・・縄に縛られたガイを引き連れ、入室してきた。
入口から真逆の方にいたピオニーが反応し、兵士が報告をしてきたのでガイを目の前の椅子に座らせるよう荘厳に指示を出す。兵士はすぐに敬礼を返し椅子に座らせんとその身を掴んで腰を下ろさせたが、明らかに目に見えて乱暴だったのでガイの顔が不快そうに歪んだ。
「さて・・・こうして顔を合わせるのは初めてだったな、ガイ=セシル・・・いや、本名はガイラルディア=ガラン=ガルディオスだったか?」
「っ・・・はい、そうです・・・」
しかしそんなこと知ったことではないと話を始め名前を問うピオニーに、ガイは萎縮して息を呑みつつ首を縦に振る・・・いや、正確にはピオニーにだけ圧された訳ではない。この部屋の中にいる人間全員から発せられる油断ない鋭い視線が、ガイを萎縮させたのだ。明らかにただならぬ空気を皆が匂わせているだけに・・・
「お前が本当の名を名乗った時の経緯はあらかたアスランから聞いている。だからグダグダ長く話すよりもまず単刀直入に聞くが、お前がガルディオスの生き残りと言うのは本当なんだな?」
「は、はい・・・それは、本当です・・・俺はホドが滅びた時には何とか抜け出すことが出来たので、生き延びる事が出来ました・・・」
異様な緊迫感に部屋が包まれる中ピオニーから続けて質問が飛んできたので、ガイはおずおずと質問に答える。自分はガルディオスだと。






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