必然は偶然、偶然は必然 epilogue

「よし、俺の準備は出来たけどいいか?お前らも」
「っ・・・はい、私は構いません」
「私もだ」
そんな時にタイミングを見計らったよう声をかけてくるルークにディストは一瞬驚きつつも頷き、ウッドロウも笑顔で頷く。
「・・・よし、んじゃ行くか」
イオン達も同じように無言で頷いた事にルークは納得し、フリングスへ首を縦に振る。出ようと・・・









・・・それでフリングス主導の下で向かったのは練兵場として使われているらしき広場で、そこに待っていたのは・・・
「レプリカ・・・!」
現れたルークに対し、一人で縄に縛られず剣を持ちながら敵意を剥き出しにして立っているアッシュだった。
「じゃあ適当にこの場で待機しておいてください。すぐに済ませますから」
「はい、御武運を」
ルークはそんな視線など歯牙にもかけることなく涼やかに待機をするように言って、フリングスの言葉を受けながら前に出る。
「よう、久しぶり」
「・・・よくもおめおめと俺の前に姿を出せたものだな、この屑が!」
「相変わらずだな、お前・・・」
そして二人で対峙する形で気安く声をかけるルークだが、全く変わった様子も見せず同じ語録で怒鳴るアッシュに呆れに肩をすくめる。
「ま、いいや。どうせお前にはここで終わってもらうんだしな」
「終わるだと・・・その言葉、そっくりそのまま叩き返してやるよ!」
「学習しないな、お前・・・」
ルークはすぐに気を取り直すが、アッシュは全く気にした様子もなくまた怒声で剣を向けながら返す。そんな様子に仕方ないと頭をかきながら、ルークは口を開く。
「別にお前に勝たせてやる気なんて一片もないけど、この戦いに勝ってもお前に残る道なんてそんなないぞ。勝ったらここから出すようにって言いはしたけど、勝ってここから出てもお前に行くあてなんてないだろ。前に言った通りキムラスカもマルクトもダアトも、もうお前を手放しで喜んで迎え入れてくるはずなんてないんだからな」
「・・・っ!」
「ま、今更お前にそんなことを言ったってどうしようもないけどな。だってお前は起こしてしまったことを全部俺のせいって押し付けるような奴なんだし」
「っ!この屑があぁぁぁぁぁぁっ!」
‘キィンッ!’
勝っても道はない、そう告げられ改めてアッシュは前に言われた事を思い出し言葉を詰まらせる。だが明らかに侮辱と取れる言葉を受け取った瞬間アッシュは瞬時にブチギレて間に踏み込んで剣を振り下ろすが、ルークは焦りを見せず剣を抜いてあっさりとその剣を受け止める。
「・・・お前さ、道を誤ったんだよ。色々とな」
「んだと・・・!?」
「すぐキレる、本音しか言わない、他者に文句がありゃ襲いかかるし事情があるかの気遣いもなく排除に取り掛かる・・・そんなこと平然とやれるような奴が、人の上に立つような人間になれると思うか?」
「っ、黙れ!」
‘バッ’
そのままつばぜり合いになる中、ルークの冷静でいてかつてをある程度わからないようにしながらも引き合いに出す声にアッシュはたまらず剣を引きバックステップで距離を取る。
「言っちゃなんだけどお前、王様は王様でも裸の王様でしかないよ。それも自分から人を離してそれで自分で文句を言う、極めて痛い孤独を演じてる馬鹿な裸の王様だ」
「・・・黙れこの屑があぁぁぁぁぁぁっ!」
だが止まるはずもないルークの言葉は深くアッシュの心をえぐった・・・裸の王様を自ら演じていると。怒りに支配されているアッシュは折角距離を取ったにも関わらずまた走り出し、叫びと共に剣を振る。
‘ブンッ’
「見え見え、そして終わりだ」
‘ゴッ!’
「ガッ・・・!?」
横に振られた剣、それを身を屈めて避けたルークは簡素に呟きながらその体勢のまま前にステップインして右拳を顔面に叩き込んだ。威力が十分に伴われたその拳にアッシュは手に持った剣を手放し、声を上げて吹っ飛ばされていく。
‘ズザザッ!’
「ぐっ・・・くそっ・・・!」
「・・・諦め悪いな、お前。でももう終わりだ」
「・・・っ!」
そしてすぐに地面に接地し勢いも途切れて少し離れた所に止まり、すぐに身をよじりアッシュは起きようとするがその前に近付いていたルークの声に気付き体を硬直させる・・・そして見上げた先には、ルークが無表情でアッシュを見下ろす姿があった。










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