必然は偶然、偶然は必然 epilogue

(導師にルーク、ですか・・・話を聞けば変わってきているようですからね、特にダアトは・・・これもウッドロウが来たことの賜物、と言うわけですか)
・・・それで自分の机がある場に戻ってきたサフィールは一人準備に片付けをしながらも、ピオニーから話題に出てきた人物達について思いを馳せる。
(思い返せば、あの時からが始まりだったのですね・・・私がこうやってここにいると決めたのも・・・!)
そしてサフィールはふと懐かしみを覚えて笑みを漏らす。かつての時を思い出し・・・















~3年前、グランコクマ~



「・・・失礼しますルーク様、導師。かねてよりお話されていたアッシュとの件について、用意が済みました。用意が出来ましたら私に声をかけてください。その場にご案内致します」
「ありがとうございます、フリングス少将」
ディストとの話も終わり、ゆったりと部屋で過ごしていたルーク達。そこに入室して用意が出来たというフリングスにルークは礼を言い、一同は軽く準備を始める。
「・・・貴方は止めないんですね、彼を」
「まぁね。ルーク君が決めたことだ。それを私が止めることなど出来ぬよ」
そんな中ディストは自身に比較的近くにいたウッドロウに静かに声をかけるが、穏やかな微笑で頷かれて返される。
「ただそれが激情に身を任せた短絡的な結論であれば私もルーク君を止めただろうが、そうではないと私も思ったからその判断に従っているんだ。でなければこのようなことをみすみす見過ごす気はない」
「そうですか・・・私はピオニーにインゴベルト陛下以外に王という存在を直接的には知りませんでしたが、貴方を見ていると王という物がいかなものか・・・それをまざまざと知らされますね・・・」
ただと更に続けられたウッドロウの言葉にディストはしみじみと漏らす、王という存在のいかに大きな事かを感じ。
「そのような大げさな事ではないよ。私はただ責任に対し、覚悟をすることを重要と見ているだけだ」
「責任に対する覚悟?」
「そうだ。何をするにしても自分の判断には責任というものが付いて回る。これは人に限らず生きとし生ける者には当然の事だ。そしてその責任と言うのは他者と関わる数が多ければ多いほどに責任が大きくなる・・・何しろその人達の行方にも左右するんだからね」
「だからこそ王には覚悟が必要、ですか・・・成程、モースなどとは格が違う訳ですよ」
ウッドロウは首を横に振りつつ当たり前の事で上に立つ者として当然と言えば、ディストは比較にモースを持ってきて格の違いと口にする。
「あまり人の悪口を言いたくはないが、彼は預言に責任を全て良くも悪くも転嫁していたからね。自分の行動理念もどういった目的があるかも、何もかも・・・だが私も道を過てば彼のようになったやもしれない。そしてこれからに関しては貴方も」
「・・・私も?」
その声にウッドロウはやんわり批判しつつも自分に加えてディストもなりうると言うと、意外そうに目を瞬かせた。
「生きとし生ける者には責任がある・・・それを忘れてしまいただ自分勝手に事を進めるような事があってはならないと私は自制してきたが、それは民の為と思い責任を背負おうと考えたのが大きい。その事に私は救われもした・・・そして今となっては貴方はここに至って立ち止まらざるを得ない立場にいるが、いずれ貴方は選択をしなければならない。自分がどうするか、その選択を自分の責任でもって。だがそこで何か自分以外の物に責任を転嫁しようとしたなら、貴方はモースと同じ道を歩まずとも同じ選択をすることになるだろう」
「っ!」
戸惑っていたディストはウッドロウの続けた言葉に驚きたまらず息を呑んだ。自分もモースと同等になるとの言葉に。
「貴方が何を選択するか、私にはそれを強制することは出来ない。しかしその選択が貴方の事を想い色々と言ってくれたルーク君やピオニー陛下を始めとした人々に関係することを忘れず、自制をして責任と共に決断をした物となることを私は願っているよ」
「っ・・・ありがとうございます、貴重な言葉・・・確かにいただきました」
そしてこれで終わりとばかりに自分の想いを最後に微笑を添えて伝えるウッドロウに、ディストは押されたようになりながらも重く頷いた。その言葉をしっかりと噛み締めながら。









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