必然は偶然、偶然は必然 第二十二話

「では僕達はバチカルに向かいますので、人々への説明はお願いします」
「はい、わかりました」
モースについての処分も話終えた所で出ると言うイオンにトリトハイムは頷き、詠師達と共に出ていく一同の後ろ姿を見送る。















・・・それでダアトを出たルーク達は一路、バチカルへと向かった。



「・・・戻ったか、ルークよ」
「はい、陛下」
そして早々と来た謁見の間で、公爵を横につけたインゴベルトとルークは対峙し頭を下げる。
「まずはだが、こちらはそなたらの言うようにすると決めた」
「ありがとうございます陛下。つきましてはマルクトとダアトの詠師陣からも同様のお言葉をいただけました。これはピオニー陛下よりの手紙になります」
「私が預かろう」
早速とインゴベルトは結論を述べるとルークも手紙を取り出し、公爵がルークに近付きその手紙を受け取る。
「うむ・・・それで本来ならすぐにでもそなたらには外殻大地の降下に踏み切ってもらいたい所だが、国内に達しを渡すのにまだ時間が必要なのが現状だ。だから後数日程待ってはくれぬか?」
「数日ですか・・・わかりました、お待ちします」
インゴベルトは納得はしつつもまだ時間は必要だからと待つように願えば、ルークもすんなりと頷く。
「ではそれまで休むといい、と言いたいがそなたらはどこで休むつもりだ?それにルークは折角バチカルに戻ってきたのだから、ファブレの家に戻って休まぬか?シュザンヌもそなたがこの前にバチカルに戻ってきた事を知り、残念がっておったとクリムゾンが言っておったが・・・」
「母上が、ですか・・・」
インゴベルトはそれで休養をと言いつつルークに対してシュザンヌの事を切り出し、ルークも微妙に悲し気に表情を歪める。
「・・・母上にお会いするだけなら、ファブレ邸に戻りたいと思います。ですがまだ私はファブレに戻るわけにはいきません。全てを終わらせるまでは。ですので母上にお会いしたら私はまたバチカルを出て、数日後に訪れたいと思っています」
「そうか・・・わかった。ではクリムゾンと共に屋敷に戻るがよい。よいな、クリムゾン?」
「はっ」
それでルークから出たのはシュザンヌに対しての顔見せ程度の帰宅という結論。その答えにインゴベルトは納得をして公爵に話を振り、それを了承させる。






・・・それで用事も済んだことで公爵を伴いルーク達はバチカル城を出た。
「・・・変わった物だな、ルークよ。この旅がお前を成長させたか」
「・・・成長、とは厳密には違います。思い直すだけの事があったからこそ、今の私がいるんです」
「・・・そうか」
そして公爵が前のダアトでは話せなかった分もあってか父親としての顔で歩きながら話しかけてきたことに、ルークは真剣な気持ちをまっすぐに返す。
「・・・積もる話もあるが、今の状況ではお前はまだ腰を落ち着けるつもりはないのだろう。この旅が終わったならゆっくりと話をするぞ。私もお前に対し言いたいことがあるからな・・・」
「はい、父上・・・じゃあイオン達は少しここで待っててくれ。ちょっとしたら戻ってくる」
「はい、ごゆっくり」
そんな姿にどこか後悔といった後ろめたい感情を覗かせつつ話したいと公爵は言い、ルークはその願いを受け入れる。と同時に屋敷の前に来たのでルークは一時の別れをイオン達に告げ、屋敷の中に公爵と入っていく。
「・・・公爵、なんか辛そうだったな」
「・・・預言の事に今まで取った行動を含め、ルークの姿に向き合わねばならないと思ったのだろう。一度公爵は結果ルークを見捨てた身だ、そういったことも含めてな」
「っ・・・成程な」
二人の姿が見えなくなった所でセネルがどういったことかと呟くと、クラトスからその推測を聞かされセネルは苦い表情を浮かべる・・・父親として取った行動に責任、そこと向き合うと決めたから後ろめたいと滲んだのだと気付き。
「・・・とりあえずここで待ちましょう。ルークはすぐ戻ってくるはずですから」
イオンはその空気をあえて断ち切るように待とうと言う、平静のままの声を保ち・・・











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