必然は偶然、偶然は必然 第二十二話

「・・・あ。ちなみに聞くけど、この装置を使って対象の命を終わらせたならどれくらい時間が経てば大丈夫だって言える?」
「理論上は時間の事は心配しなくても大丈夫ですよ。元々大爆発自体机上の空論と呼べるような代物ですし、音素振動数が正常でない状態で息絶えたならまず大爆発が起きることは有り得ないでしょう。ただどうしても心配だと言うなら対象が死んだ後その場から離れてください。大体その姿が見えなくなる位置までで構いません。それで一夜明ける頃にでもなればもう大爆発が起きる確率は無いに等しくなるでしょう・・・大爆発を起こす為の魂と呼べる存在が霧散して消えることで」
「・・・そうか、わかった。ありがとうディスト、そこまで聞いて安心した」
ただふと思い出したよう不安材料に向けて質問をするルークにこうなるだろうとディストが丁寧に返せば、ルークはすっきりとしたように笑みを浮かべて礼を述べ頭を下げる。
「いえ、礼には及びませんよ・・・それよりここまでしたのですから、私の身の安全は保証してくれますよね導師・・・?」
「えぇ、それはもちろん。ただまだ僕達はやることが残っていますので貴方をダアトに戻すことは出来ませんから、まだここにいてください。いいですね?」
「・・・そういうことなら、と言いたいのですが・・・せめて出来れば貴殿方が何をしているのか、それをお聞きする事は出来ないのですか?大爆発の事を初めとしてフォミクリーの事を何故知っているのかもですが、どのような思惑で動いているのかを知りたいのですが・・・」
「・・・成程・・・」
ディストはそんな姿に頭を振りつつも自身の安全についてイオンに聞き、グランコクマから出す気のないイオンは保証はするがまだ帰せないとあっさり返す。その言葉に納得はするが以前から聞きたいと疑問に思ったことをたまらずディストは口にし、イオンはまんざらでもなさそうに頷く。
「・・・その質問に関してはまたこのグランコクマに来た時にお答えしましょう。今はまだ説明するのに多少時間が早い」
「時間、ですか・・・?」
「えぇ。今日はここまでにして入口のフリングス少将に声をかけ元いた部屋に戻ってください。またその時が来れば貴方に来ていただけるようにお膳立てしますから」
「・・・えぇ、わかりました」
そして少しの間を空けイオンが口にしたのは後で説明するとの言葉。ディストは何故と首を傾げるが、後でという態度を崩そうとしない平然としたイオンに頷く以外になくその場に立ち上がる。
「・・・感謝しますよ、ディスト」
「いえ、ですが次に会う時は事情をお話しください・・・では失礼します」
‘ガチャッ、バタン’
それで入口に向かい背を向けたディストにイオンがそっと感謝を告げれば、振り向くことなく一度立ち止まり今度の話について念を押してから今度こそ部屋から退出していった。
「・・・本当にディストにこれまでの事を話すつもりか、導師?」
「えぇ、クラトスさん。おそらくディストは純粋な好奇心から僕達の事を知りたいと思っていると見ました。それが危険かどうかも踏まえた上で謎を解くために。多分僕が断固とした態度で拒否を示したなら仕方なく引いたでしょうが、それもなかったことから僕に話を聞くことを決めた・・・ですからこれまでのお礼に加えてグランコクマに残っていただくためにも、事情の説明はしようと思ったんですよ。話をすればまずディストはグランコクマに残る・・・いや、残らざるを得なくなる心理にならざるを得ないことを狙った上で」
「・・・そういうことか」
それでクラトスがイオンの話した事の中身に何故と声をかければ、その妥当な予測にクラトスも納得して頷く。



・・・もうここまで来ればイオンの言ったよう、ディストに全てを明かしてもいいと言えた。

これからここを出てもう一度グランコクマに来るなら、それはつまりプラネットストームを停止させた後・・・つまりフォミクリー装置を稼働させてレプリカを造れなくなる状態だ。そんな状態ではいくらディストでももうお手上げの事態になる。

それにかつての事を明かすのはディストの二つの幻想を打ち砕く事にも繋がるのだ。一つはネビリム復活を求めても何にもならないこと、二つはジェイドの実態という物を知らせることだ。

この二つはディストにとって確かに信じがたい事ではあろう・・・しかしそれを補ってあまりある事実をイオン達は知っているのだ。かつて起こった事実を併せて説明すれば、ディストは堕ちるとイオンは確信していた。

・・・ただよしんば思った通りにいかなくともディストの人事はイオンが握っているとそう考えれば、別段グランコクマにその身柄を置くことも不可能ではない。そう思えば別に大した問題ではないと言えた、失敗したとしてもディストの事は。










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