必然は偶然、偶然は必然 第二十二話

「ではまずお聞きしますが、レプリカが造られる流れとして元となる素体から身体情報を取り出しその情報を元に素体と同じ存在をフォミクリー装置を使い造る・・・という事はご存知ですね?」
「えぇ、完全同位体はかなり偶然に近い形でしか造れないと言うことに身体情報を抜き取る際に命を失いかねない事も」
「はい、その通りです。それでそこで質問なのですが、何故身体情報を抜き取る際に命を失う可能性があるか・・・貴殿方はご存知ですか?」
「・・・いえ、それは知りませんが・・・もしやその質問が答えに繋がるんですか?大爆発を防ぐという答えに」
「その通りです」
了承が取れたことに早速とディストは話を始めイオンはその中で出てきた問いに、そこに答えがあるのかと問えば自信を持ってディストは頷く。
「これはどう説明するべきかと思い考えた例えなのですが、レプリカを造る際に身体情報を抜き取る事は複雑に組み上げられて絡んだ積木の中から一つ積木のブロックを抜けと言っているような物なのです。それもどれがその形を一瞬で崩すかわからない、危険をはらんだものです。そしてその場所は個体個体によっての個体差があります。どこをどう取ればいいのかの個体差が」
「・・・それはつまり、身体情報を抜き出して死んだ人はその積木のように急所とも呼べる場所から身体情報を抜き出すから・・・なんですか?」
「えぇ、私はそう見てます。そしてこれも例えで言いますが、もし仮にどこでもいいので指を失ったとしましょう。それは確かに体からすれば痛い損失と言えるでしょうが、確実に死に至るかと言えばそうではありません。指を失っただけではまだ人はそうそう死ぬ事はありませんが、人によっては弱った体にダメージが加わった事でショック死する事も全くない訳ではありません。その辺りは積木と違うところですが・・・まぁ大まかに身体情報を抜いて死んだ方はそのような死因なのですが、これはあくまでも参考の話です。重要なのはこれからになります」
「「「「・・・」」」」
それで更に続けて話をするディストだったが、ようやく前置きを語り終えたというその声に一同は固唾を飲んで真剣な顔になる。
「その点で言えば現時点でのアッシュは身体情報を抜かれてしばらく経っているので、致命的な場所から身体情報が抜かれた・・・などということはないと思っていいでしょう。ですがそれも完全同位体であるルークがいて、かつ条件が揃ったなら大爆発によってアッシュに乗っ取られる可能性はゼロではありません」
「・・・ではどうすれば、大爆発を避けられるのですか?」
「急かさないでください・・・元々完全同位体という存在があまりにもいなかったので研究は少し難航しました。そもそも大爆発が起きる等というのは机上の空論であったために。ただそれでも研究をしたから言いますが、もし普通のレプリカが相手だったなら大爆発なんて現象は絶対に起こり得ないんです。姿形は似てても音素の振動数に劣化した部分の違いがあっては乗っ取れないと被験者の体は元あった物を取り戻そうにも見向きもしないし出来ない・・・だからこそ、私はその性質に注目しました」
「その、性質・・・?」
「要は体が完全同位体と認識しないよう、認識出来ないようにしてしまえばいいのです。そしてその手段として最も分かりやすいものが」



「封印術を用いることです」



「封印術・・・っ!?」
・・・ディストから出てきた結論にイオンはまさかと目を丸くした、封印術が答えということに。







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