必然は偶然、偶然は必然 第二十二話

「今がよければ、後の者に責任を丸投げにする・・・そのようなことをすれば本当の意味での事態の解決になど繋がりません。ましてや今の時点ですら、そう遠くない内の今の体勢の崩壊を暗示させる出来事が待っています・・・このまま何もせずただ手をこまねいていた所で、事態は悪化するばかりでしょう」
「・・・だからプラネットストームの停止をして音素と預言に頼るのを止めるべきと、そなたは言いたいのだな?」
「はい。様々な面を考慮した上でもうそうする以外にないと私は思います。無論今話したことはマルクトのピオニー陛下にも話をした上でそのようにすべきかと思いますが、いかがされますか?」
「・・・うむ、確かにピオニー陛下にも話は通さねばならんだろう。ただ個人としては賛成だがこのような重大な問題をわしだけの一存で決める訳にはいかん、まず重臣に話を通さねばならんからな・・・だからルークよ、そなたがマルクトに行ってどのようにするかを聞いた後またこのバチカルに来てはくれんか?その時には重臣に話をした上でキムラスカとしての決議の結果を話そうと思う」
「・・・わかりました、そうさせていただきます(・・・まぁとりあえず成功、かな?一応叔父上の心はこっちに傾いたようだしな)」
・・・後の為に決断をくだすべき、そう真剣に話したルークの言葉はインゴベルトを最終的に首を縦に振らせた。話をまとめるように口を開き終わったルークに時間が欲しいと自身の賛成の旨を伝えた上で口にし、内心でインゴベルトの様子を成功と断じる。
「しかしまたルークよ・・・そなたの考えには驚かされたな。まさか預言に音素を残した先人達の非に思い至るとは・・・」
「・・・いえ、それも考えざるを得ないきっかけがあったが故の事です」
そんな時にインゴベルトがふとその考えを誉めるような事を口にするが、ハロルドがきっかけだったことが故に素直に受け取らず首を横に振る。
「そうか・・・む、いかんな。ルークよ、そなた達はすぐにグランコクマに向かうといい。わしはこれより重臣達を集めて話をしようと思う」
「はい、わかりました。ではまた、マルクトよりの決定を携え戻ってまいります」
その返答にしみじみとした声を上げながらもグランコクマに向かうようにインゴベルトは言い渡し、ルークもすぐに頷きイオン達と共に謁見の間を退出していく・・・












・・・そしてアルビオールに乗り、ルーク達はグランコクマへと向かう。
「ルーク・・・さっきのインゴベルト陛下ではありませんが、本当に驚きましたよ。あんな考えがあったなんて・・・」
「ま、それもハロルドから聞いた言葉からなんだけどな」
「いえ、そんなに謙遜する必要はないと思いますが・・・何故その話を僕にしてくれなかったのか、理由を聞いていないのですが・・・」
「あぁ、それか?」
そんなアルビオールの中でルークとイオンは会話を交わすが、イオンの再度の疑問にルークは気楽に口を開く。
「まぁダアトの、それも導師って立場の人間にあんなことを言わせる訳にはいかないって思ったからだな。あれって預言にダアトの信望者の感じ方からしたら下手すっとユリアとか諸々含めた先人達への冒涜とか言いかねない奴もいるだろうし、導師って立場の人間が例え納得はしても率先して話していい内容じゃないだろうしな。だからあえて俺だけで話したんだよ。それなら変に何か言われても俺の個人の考えで済ませられるしな」
「っ・・・ルーク・・・貴方、そこまで考えていたのですか・・・」
だがその気楽な声からはあまりにも対照的な内容の重さに、イオンはなんとも言えぬ気持ちを抱いた・・・自身の事を配慮した上で、納得を得るためにあえて自分の身の危険を省みずにいったその姿に。
「ま、叔父上達にも色々考えてもらいたかったからな。預言とか音素を残すことの是非について・・・あれはその結果だよ。それよっか次はグランコクマだけど、その後ダアトにも行っとかないか?トリトハイムさん達にも外殻大地降下からのことを話した方がいいだろうしな」
「・・・そうですね、そうしましょう」
しかし全くルークはそれを気にした様子も見せず後の事を話してくる。そんな様子にイオンはそれ以上は何も言わず、ただ賛成と首を縦に振った。






14/30ページ
スキ