必然は偶然、偶然は必然 第二十二話

「はい。苦肉の策である事は否定出来ません。ですが今申し上げたよう、人々は障気と言うものの存在を聞きはしても実際に体感はしていません。少しの時間だけでも障気がいかような物なのか・・・それを理解出来ねば、人々は音素に預言の恩恵をいつまでも手放すことは出来ないでしょう。戦争の預言は避けるべきだが、それ以外の日常でなら預言は頼るべきものだから音素と共に残しておくべき・・・恐らく人々が何も学ばないままなら、そのような風潮に考え方は出てくるでしょう・・・」
「むぅ・・・十分に有り得る事だな、そのような考え方は・・・」
それで重ね重ねそうすることの是非を語り手を打たなかった時の事を言われ、インゴベルトはルークの言葉に苦々しく視線を横に背ける。
(・・・その中には貴方も含まれているんですけどね)
・・・そんな姿にルークは心中でインゴベルトもと付け足す、口元を僅かに上げる形で。



・・・ルーク達はインゴベルトを信頼をしてるように見せているが、その実心から信頼をしているわけではない。何故かと言えば預言を達成させるためにナタリアを結果見捨てることを選んだ前科があるからだ。

今までの国の方針が故に預言に付き従い小事を取るより大事を取る事が国の為と考える気持ちはまだ為政者としての責務を果たしたためと言えるが、反面それは流れ次第では預言を詠み続けることを承認しかねないからだ。人々が預言をひたすらに望んでいて、自分等に対して反発をされるような事態になるのを恐れる形で。

故にルークはそうすることの是非を説いた上でその実はインゴベルトにも身を持って体感してもらう気でいた、障気の驚異を・・・



「・・・そして更に申し上げるなら、預言に頼ることはこれよりは実質的に不可能になります。それも時が過ぎるほど、徐々に」
「何・・・何故そのようなことが言える?」
・・・だがまだ音素の恩恵を断たせ預言を詠むのを止めさせるには言わなければならないことがある、決定的な事実を。預言が頼れなくなるというルークの言葉に、インゴベルトは不安げな表情を浮かべる。
「・・・これはローレライから聞いたことですが、元々その通りにしたら世界が滅びるという未来を見たが故に預言をユリアは残しました・・・ですがその預言は言ってしまえば第七譜石に詠まれた未来分の時間までしかない。つまりはそこまでしか預言は詠めないのです」
「なっ!?・・・なんと・・・」
「それだけではありません。個人に対して詠まれる預言も恐らくは個人差、と言うよりは本来のその未来が死という形で終わるまでしか詠めないでしょう。この世界が預言とは違う、滅びを避ける未来のための道を歩むのですから・・・更に言うならその預言も第七譜石の中身から推測してマルクトにケセドニアと来て、キムラスカとダアトのどちらかがその後に来て最後はそのどちらか。順序から見てこのような順番で預言は詠めなくなっていくでしょう、個人に対して詠まれる預言も・・・その事を言わずにいれば人々は不満に声を荒らげるでしょう。何故このような事になったのかと。そして最後に残ったダアトかキムラスカの国の人々も預言が詠めなくなれば、いよいよもっての終わりです。否応なしに預言を頼るのを止めざるを得なくなり、人々は様々な感情を表に噴出させることでしょう」
「・・・っ・・・っ!」
・・・それはこれからの世界において預言は詠めなくなるということだが、ルークの言葉はローレライから話を聞いていたこともあり正確に遠くない預言の終わりの根拠を語っていた。預言のこれから、それに付随する人々の反応・・・ルークから語られた現実を織り交ぜての音素を残し預言を残した場合の推測に、インゴベルトは顔面の穴という穴を開かせ冷や汗をダラダラと垂らしながら停止した。
「・・・陛下、呆然とされる気持ちはわかります。ですがこれらはマルクトにもですが、人々にも伝えなければならないことなんです」
そして最後と言わんばかりにルークは意を決したよう口を開く、自身の考えを伝えるために。







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