必然は偶然、偶然は必然 第二十二話

「今人々はこれからどうなることかと思っているでしょう。かつてない形で国と国の結び付きが出来たのですから。またそれと同時に今の事態がどれほど重大な事柄なのかを理解しているかどうかと言う事に関しては、恐らくほぼ理解していないかと思われます。人々からすれば正直に言わせてもらえば、まだ他人事としか思えない事態でしかないのですから・・・」
「・・・ならばルークよ、そなたはどうした方がいいと言うのだ?」
「・・・これは後程に言うべき、と思っていましたが言わせていただきます。それは」



「障気の押し込みを行わず外殻大地を降ろすべき、そう私は考えました」



「なっ、何!?ルーク、そなたなはそれがどのような意味かわかって言っておるのか!?」
「はい。無論、考えもなしにそのようなことは言っておりません」
・・・そのルークの考えとはインゴベルト達に発表した手順とはあえて違うように行動すること。
しかしそれが障気をただ残すだけではと不安に声を揺らすインゴベルトに、ルークも心得ていると冷静に返す。
「これはローレライから聞いたことなのですが、障気の中和は超振動を用いれば可能との事です」
「何っ!?それは真か!?」
「えぇ、ローレライの協力があれば可能です。ただそれも言ってしまえばあくまで一時的な処置に過ぎません。また音素の消費が増大し、プラネットストームの活動が活発化すればすぐに障気はまた産み出されることになるでしょう。何せ障気もですがその元となる音素を出すのはプラネットストームで、元をどうにかしない限りは障気はいつ復活するのかと恐々としなければならない日々を過ごすのは避けられません」
「そんな・・・それをどうにかすることは出来んのか、障気だけは出ないようにすることは・・・?」
「まず無理でしょう。現行の技術どころか創世歴の技術ですらそう出来ずにいたのですから、どう研究した所で我々が生きている間に解決法が見つかる可能性はまずないと見ていいかと」
「・・・っ!」
それで解決法の超振動の事を口にするが根本的な解決策ではないと付け足され、インゴベルトはすがるようにどうにかならないかと問う。だが先程の話も踏まえて確率はほぼ皆無に等しいと告げるルークに、インゴベルトは苦く表情を歪めうつむく・・・先程のルークの推測が痛いほど心中に残っているのだろう。無責任であって音素に預言を残す事を決断した先人達の行動が。
「・・・私としてはそのような出来ない可能性が高いことに一縷の望みをかける事は出来ませんし、ローレライもそのようなことは望んではいません。ですのでいきなりではありますが、私はこう提案します」



「外殻大地の降下を成し、障気の中和を遂げたなら・・・もうプラネットストームに音素、そして預言の役割を終わらせるべきと」



「なっ、何だと!?」
・・・そんな状況のインゴベルトだからこそイオン達の考えも含めた最終的な狙いをルークははっきりと口にした。悲壮な想いと共に終わらせるべきと口にしたそれらに、再びインゴベルトの驚愕の声が謁見の間に響く。
「・・・陛下、私の申す事が突飛な物と思われるのは当然と思います。ですが今以外に、今以上の機会はもうないのです。預言の役割を正しくすると共に、音素に預言に頼り続ける事による弊害とその実態を知るには」
「何・・・弊害はともかく、実態とはどういうことだ・・・?」
「決まっています、障気の事です・・・我々にアクゼリュス、それにユリアシティの方々は大小問わずに障気に触れた事でその恐ろしさを身に染みて理解しました・・・ですが他の方々は話に伝え聞くだけが精々で、その驚異をまだ心底からは理解されてはいません」
「っ!まさかそなた、障気の押し込みをしないと申したのは外殻大地を降ろした後障気に触れさせる為だと言うのか!?もしそうだと言うなら・・・!」
「落ち着いてください、陛下。勿論我々も人々に配慮をした上で外殻大地を降ろした後、すぐに時間をかけずに中和したいと思っています。そうすれば体調に異常が出るような事にはなりません」
「そ、そうか・・・む、待てルーク。もしやそなたはその事により障気の驚異を身を持って知ってもらおうと言うのか。あえて体感してもらうことで・・・」
「えぇ。少々心苦しくはありますが現状で人々に障気に対する危機感を持っていただくには、この方法以外にありませんので・・・」
「・・・そうか、そなたにとっても苦肉の策を出しているということか」
ルークはそこから更に訴えかけるよう話を続けるが、途中でインゴベルトはその考えていることに気付き批難の声を向ける。すかさずルークは肯定しつつも手は打つというが、インゴベルトは決死の想いで苦肉の策を出しているのだと悲痛なその表情に自身も痛ましく表情を歪める。










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