必然は偶然、偶然は必然 第二十二話

「そしてそうであったからこそ私は外殻大地を作る以外に当時の科学者達は選択はなかったのだと思われます。民意を踏まえた上での反論を押さえた選択は」
「・・・それは、確かにそう考えればそうなる・・・か・・・」
「はい、ですが我々が会談の時に話した禁書も禁書と呼ばれている通りその書はダアト内でもかなり奥まった所にありました。そのような重大な物であったにも関わらずです・・・そんな物が何故禁書扱いになっていたのか?それはおそらく障気の事実から音素を使い続ける事を危惧したかつての科学者に対して預言信望者の代表は後のことなど知ったものかと関心を寄せず、またそれが預言に詠まれた対処法ではないからということでそのような技術を使うことへの人々の反発を恐れたが故だと思われます」
「!?・・・そこまで先人達は預言を盲信していた、と言うのか・・・!?」
更にルークの口から出てきたのはかつての禁書の事を交えた上で何故それが使われなかったのかとの推察。インゴベルトはそのあまりな身勝手が滲み出た先人達の行動に目を見開き、呆然とする以外に出来ない。
「盲信、という物でしたらモースに代表されるような輩がいますので一概に昔だけを批判することは出来ません。むしろ時代の形態が変わったからこその盲信の姿があるから、今のような状況が生まれたのだと私は思えます・・・ここで重要なのは今こそ我々が預言というものの本当の意味を誤ることなく把握して、それを人々に理解していただかなくてはいけないということなのです」
そんな姿にルークは今も盲信はあると言い、本題と言わんばかりのまっすぐでいて切なる想いの込められた声をインゴベルトに・・・いや、場にいる者達全てに向ける。
「ここでただ先人達を詰める事は簡単です。障気の事をただ放っておくばかりで、事態をその時に真に解決出来なかったのは事実なのですから。ですがだからとただ手のひらを返して先人達を悪だと言うだけで人々は付いてくるでしょうか?人々の生活に大きく根付かせ、預言を広めてきた先人達を」
「・・・それは・・・なんとも言えぬ・・・下手をすれば我々も責められるであろうな、何故今更そのようなことをと・・・」
「えぇ、おそらく陛下のおっしゃる通りになるでしょう。今の世界の形があるのは預言通りにしようとした先人達に、その先人達の教えを継いできた我々・・・そんな我々がそのようなことを言えば何を今更と言われる可能性があります、例えそれが正論であっても・・・いや、正論だからこそです」
「「「「・・・」」」」
場に響くルークの質問と推測にインゴベルトだけでなく、イオン達もなんとも言えない表情で考え込む・・・今更正論の推察をしてそれを発表したところで預言第一の生活をしていた人々にとって、降って沸いたような押し付けの言葉など一朝一夕に「はい、そうですか」と受け入れられるはずがない。むしろそこまでされてしまえば預言を人々から取り上げるために国が画策しているのではと邪推する声が出てもおかしくはないのだ・・・以前は音素に預言の恩恵だけを求め続けた時の害をヴァン達の行動で人々が危機感を身を持って体感したから反発もなかったとイオン達は知っているが、それが表立ってそこまで広まってない今だからこそこの問題は大きな物と言えた。
「ですがだからこそ人々にはただ上から物を言うばかりではなく、共に理解していただかなくてはならないのです」
しかし今のルークはそれを打開する為に考えを持って発言している。故にただ前を見てまっすぐと口を開いた。






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