必然は偶然、偶然は必然 第二十二話

「・・・リグレット、この際ですから一つ聞いていいですか?」
「・・・なんでしょうか?」
「貴女はヴァンに命じられてティアの教官を務めていた前歴がありますが、正直な所で最初ティアをどう思っていたのですか?」
「・・・ティアをどう思っていたのか、ですか・・・」
その苦笑にイオンはまっすぐに問い掛ける、昔のティアとのことを。リグレットはその問いに少し苦い顔を浮かべるが、口を開く。
「・・・率直な感想を申し上げるなら、見識の狭い子供だったと思っていました。一時が経つまでティアは私を認めようとせず、認めてからは従順に言うことを聞いてくれました。しかしそれもティアの考え方自体が変わったわけではなく、私も閣下を想うのは構わないとそこには目をつけようとも思いませんでした・・・今となっては私がティアの見識を少しでも広げるようにしておけばよかったと思っています。ヴァンを刺してからロクに会えた時がなかったのでそれまでになんとかしておけばよかったと・・・」
「成程・・・」
それでリグレットの口から語られる後悔の滲んだ声に、イオンも重く頷く。
「・・・貴女はいい指導者ですよ、リグレット」
「っ・・・何を言われる、導師・・・!?」
だが続いた笑みを浮かべたイオンの賛美の声に、まさかと驚きリグレットは表情を揺らす。
「いい指導者と言うのは自身の過ちを過ちと認める人物にあると、僕はそう思います。その点で昔の貴女はルーク達との繋がりもなかったため何も知ろうとせずそのまま果てましたが、今の貴女は事実に向かい合いそれを認めることが出来た・・・それが出来たと言うことは、貴女には指導者としての資質は間違いなくあるということですよ」
「それは・・・買い被りすぎでは・・・」
「買い被りなどではありません。現にそうして人々に顰蹙を買った者達を僕達は知っていますから」
「・・・ぁ・・・」
過ちを認められる、それが出来ることがいいと話すイオンに首を横に振ろうとするが明らかにアッシュ達の事を匂わせるような言葉を返されリグレットは小さく口中で声を漏らす。
「貴女は少し悲観的になっていたでしょう。ウッドロウさんのことと自分を対比して。ですがそんなウッドロウさんでも過去に後悔された事や間違いを起こしたことだってあるんです。重要なのはそれをどう受け止めるかですが、過ちを過ちと認めないのは指導者としては最低限のラインにまで行っていると僕は思います。ましてや人の意見など聞かずただ愚直に自分は正しいなどと思い込み、取り返しのつかないところにまでいかせたのではもう救いようがないとすらも。ですからそれに気付けたと言うことは、貴女には十分に指導者としての資質はあるんです・・・自信を持ってください、リグレット」
「自信、ですか・・・」
「えぇ、ティアの見識の狭さに気付けなかったというのは貴女にとって辛い事でしょう・・・しかし今の貴女は過去の過ちを糺した上で動けるはずです。そして間違ったとしてもそれを認め、他者を頼れるようにもなったはず・・・ただ確かに調子に乗りすぎないような戒めは必要でしょうが、今の貴女にならそれが出来ると僕は思います。自信を持って彼らと接することが出来ると」
「!・・・導師・・・すみません、ありがとうございます・・・」
・・・リグレットの心の内にあった迷い、それをイオンは見事に打ち砕いた。しっかり諭すよう慈愛の笑みを持って自信を持つよう言い含めたイオンに、リグレットは深々と頭を下げた。感謝の念を多大に含ませながら・・・











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