必然は偶然、偶然は必然 第二十二話

「そうか・・・では何か困ったことがあれば遠慮なく言ってくれ。私に出来ることがあれば協力しよう」
「ありがとうございます、ウッドロウ・・・」
そんな姿を見てウッドロウが優しく困った時は自分を頼るように言えば、アリエッタは安堵した笑みを浮かべ礼を返す。
「うん・・・では少しは気も晴れた事だろうし、ダアトに戻ろうか。食事の用意が出来たから君を呼びに来たんだが、どうかな?」
「はい、行くです」
「では戻ろうか」
それで本来の目的と食事の事を出せば、アリエッタは嬉々と頷き戻るウッドロウの後を付いていく・・・












「・・・少し遅いですね、ウッドロウさん」
「森の奥にアリエッタが行っているからかもしれませんね・・・」
・・・一方導師の私室にて二人向かい合って食事を取れるよう机と椅子をセッティングしたイオンとリグレットは少し遅い二人の事を気にかけていた。
「・・・今思えばこうやって貴女達と顔を合わせて食事をするようになるとは思いませんでしたね。昔を思うと」
「それ以前にこのように導師の私室でフランクな形で食事を取るような事になるとは露にも思っていませんでしたよ。私は・・・」
「そこは仕方ないと貴女も承知しての事でしょう。今のダアトはそれほど使える人材がいないことも事実です。導師守護役が少なからずモースの息がかかっていた件に加えて、ヴァン率いる六神将も今となっては僕についたのは貴女とアリエッタのみ・・・今の状況で僕の護衛に加えて補佐が出来るのは貴女達二人にウッドロウさんくらいしかいないんですから、食事も出来れば一緒にした方が効率がいいことはわかるはず」
「まぁ・・・確かにそれをわかっているからこそ、こうしているんですけどね・・・」
イオンはそんな中で軽い世間話をするよう話を切り出すが、今の状況はおかしいと生真面目なリグレットは苦い表情を浮かべる中ダアトの事情を突かれて改めて理解していると洩らす。



・・・イオンが今言ったよう、ダアトに使える存在がそこまでいないと言うのは事実であった。導師守護役の件しかり、ヴァン達という人材が敵になった件でだ。

無論それらは避けられぬ事情であったためイオンは文句を言うつもりはないし、無理を言えば誰か潔白を証明された人材を自分の元につけてもらうことも出来る。何せ今の導師はイオンなのだからそれくらいはトリトハイムも譲歩出来るだろう。

しかしそうしないのはまだ知られてはまずいことも残っているため、こちらのやることには巻き込めないのだ。だから今は事態が落ち着くまではリグレットとアリエッタ、それにウッドロウが警護につくと詠師達に話を通しておいた。

だからこそ今リグレットがイオンの部屋にいるわけだが、食事に関してはイオンの意向もあって私室で共に食べることになっていた。どうせここにいるのは自分の味方なのだから、別にそこまで気を張る必要もないと言い出したことで。



「しかしあいつもマメだな。フローリアンの面倒を見ながらアリエッタもとは・・・それも大した苦労も見せずとは・・・」
「それは前歴があるからだと思いますよ、弓の師匠に師事していた時にその孫娘のチェルシーって人の面倒も見ていたそうですからそこで培われた物かと」
「そうですか・・・つくづく思い知らされます。ウッドロウがいかに人生経験豊富な人格者なのかを・・・」
そんな中で話題を変えるようウッドロウの面倒見の良さを感心するリグレットにイオンがその訳をこうだろうと説明すると、感心と共に自信のない苦笑を浮かべた。










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