必然は偶然、偶然は必然 第二十二話

・・・さて、ルーク達が何をしにベルケンドにまで来たのかと言えばスピノザへの牽制及びヴァンからの解放を伝える為と、口裏を合わせにだ。

今となってはもうヴァンは囚われの身となっていてスピノザはもう自由の身となったも同然の存在だが、かといってここで放置と言うのも一抹の不安があるのも事実だった。何も知らないが故に変な行き違いが起こった場合、下手にヴァン達との繋がりやルークの事実を匂わせるリアクションを取りかねない事で。

だからルークは時間が空いた事でベルケンドにリグレットからの事情を記した手紙を持参の上で二人と来たのだ、互いのこれからのために。

・・・尚二人が付いてきた理由は特にやることもなく手持ち無沙汰であったこともあるが、スピノザが変に狂乱する可能性も全くないわけではなかったため牽制も兼ねてついてきたのである。












「・・・とりあえずは大丈夫、かな」
「だと思うがな」
・・・そして数十分後、研究施設から出てきた三人はすぐに顔を合わせ成功かと確認していた。
「元々理知的ではあったのだろうな・・・しかし越えてはいけない領分と分かっていても科学者としての性が出て、ヴァン達に協力をしてしまった。それが人として犯してはいけない物、国どころか世界に仲間すら欺く物だと知っていても・・・だからこそその苦心から少なからず解放されたことに安堵を覚えたのだろうな、スピノザは・・・」
それで二人の会話にしみじみとディムロスは先程を思い出すよう自身の考えを口にする。



・・・いきなりルーク達が目の前に現れたスピノザは動揺をし、事実を聞かされた時には酷くホッとした様子を浮かべていた。その姿はディムロスが言ったような重責からの解放が根本にあると二人も見ていた。

しかしそこでただ解放されたと知らせるだけに留める訳にはいかなかったので、ルークを含めたレプリカの事実とヴァンへの協力の事実を墓場まで心に秘めるようにとは言い含めておいた。これから接触した場合は可能なら協力するように言った上で、自由に生きていいとも・・・そう聞いてスピノザは一も二もなくすぐに頷いた、その事を喜びだと言わん様子で・・・



「まぁスピノザの事はもういいだろう・・・さて、これからどうする?」
「とりあえずやることやったし、ダアトに戻るかシェリダンでまとまっとくかだけど・・・シェリダンにいた方がいいだろうな。ギンジにも少し休んでもらった方がいいだろうし、アルビオールの点検も必要だし・・・何より、セネルを助けてやんないとな・・・」
「・・・そうしよう、流石にセネル君が不憫だ・・・」
そんな空気にクラトスが軽くスピノザの事をまとめて次にどうすると話題提起すると、ルークは引きつったように笑いながらシェリダンに行こうと言いディムロスもそれに疲れたよう同意する・・・技術面で暴走するハロルドに付き合うセネルに同情せざるを得なかったようだ、今度は自分達も巻き添えになる可能性が出てくるにしても・・・















・・・そして一方ダアトに残っていたイオン達だが、その中で一人悩みを抱えている者がいた。



「・・・はぁ」
・・・それはアリエッタである。ダアトの外の森の中、この辺りに住まわせていた魔物がアリエッタの周りに一匹もいない。そんな状況であるのに全くアリエッタは気にした様子もなく、地面に座り込み溜め息を吐いていた。






3/30ページ
スキ