必然は偶然、偶然は必然 第二十一話

「どうしたんだ、リグレット。いきなり笑って・・・」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
「・・・何でもないならいいか」
その笑みに何かと聞くルークにリグレットは首を横に振り、特に気にした様子を見せず納得する。が、そこでふとルークは笑みを浮かべる。イタズラめいた笑みを。
「・・・そういや今思い返してみたらリグレットの忌憚のない笑顔見たのって初めてかもしんねぇな」
「む・・・そうか?」
「それもウッドロウのおかげか?」
「なっ・・・!?」
だが笑みの意味に気付かないリグレットはルークの声に首を傾げるが、唐突に出されたウッドロウの名に瞬時に顔を赤くする。
「ははっ!いい顔してるぞリグレット!」
「お、お前・・・一体何を・・・!?」
「わりぃわりぃ。いや、ちょっとどうなのかって思ってさ。リグレットがウッドロウの事をどう思ってるのかってな」
「わ、私がだと・・・!?」
たまらずルークは吹き出すがリグレットは混乱して何も出来そうにない様子に、ルークは少し調子を落として目尻を手で拭いつつウッドロウをどう思ってるのか知りたかったと言い、リグレットはまだ混乱の残る様子で口ごもる。
「まぁなんつーか・・・ウッドロウの過去、っつっても恋愛面での事は聞いたか?そこのとこ俺ハッキリと聞いてないからわかんないんだけど・・・」
「あ、あぁまぁ・・・一応イクティノスからな」
「そっか。俺もイオン達からウッドロウに対してリグレットに何を求められたのか聞いたんだけどさ・・・だから改めてリグレットがどう思ってるのか確認を取りたかったんだよ。もし嫌ならどうかと思ってな」
「・・・いや、それはない」
それでルークは先程のフローリアンとの対面の傍らで繰り広げられていたやり取りを聞いてない事からリグレットにとって二度目となるウッドロウといることへの意思確認をするが、先程までの動揺から打って変わってリグレットは強い意志のこもった表情で首を横に振る。
「私は迷わん・・・私が今いたいと思えるのはウッドロウの側だ。今の気持ちに誰かの強制だとか、そう言った他者の意思はない。それはハッキリと言える」
「・・・じゃあフローリアンと一緒にいたり、向き合う気もあるんだな?」
「勿論だ」
「・・・そうか」
二度目だからこそ今度は恥も迷いもなく言える。まっすぐ自身を見据えるリグレットの言葉にルークもそれ以上は何も言わず、納得するにとどめる・・・筈もなかった。
「それならいいや・・・でも不意にウッドロウの事出されてそんな露骨に動揺してたんじゃ踊らされっぱなしになるぞ?」
「なっ!?お、お前一体何を・・・」
「ま、ここから先は俺から言っていいもんじゃねーしな。だからアドバイスを一つ送っとくよ・・・たまには女性特有の自分が引っ張るとか振り回すくらいの可愛らしい行動力も見せた方がいいと思うぞ?時に積極的なくらいの方がウッドロウにとっても刺激的だろうし、女としての魅力も感じるだろうしな」
「っ・・・!」
「ま、無理しない程度に色々頑張れよ?んじゃな、お休み~」
自身は余裕を持ち、なおかつ相手を振り回すくらいに。そうアドバイスを告げるルークにリグレットは最後はパクパクと金魚のように口を開けて真っ赤な状態で静止し、言いたいことだけを言い残しルークは笑いながら手を振ってその場を後にする。
(リグレットにはこのくらい焚き付けてもバチはあたらないだろ、あいつ結構奥手そうだしな・・・)
しかし立ち去るルークの心中は至って真剣な考えがあった・・・なんだかんだで真剣なリグレットの事が微笑ましくもあったのだろうが、ふと背中を押したいとも思えるくらいウブにしか見えない姿だったが為にルークもあのようならしくない形を取ったのだ。真面目に言うと恋愛面にそう聡い訳でもない自分もこっぱずかしくなるような事を道化を演じることでうまく言い切る形で・・・










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