必然は偶然、偶然は必然 第二十一話

「・・・すまないな、話につきあってもらったばかりか悩みを解決までしてくれて」
「いいって別に。それに悩みが俺が手助け出来る範囲のもんでよかった」
「・・・つくづく今になって思うな。お前とアッシュは違うと」
それで少ししてふと苦笑気味に頭を下げるリグレットにルークは笑顔で首を振るが、そんな姿にしみじみとした感想をリグレットは漏らす。
「俺とアッシュが?そりゃそうだろっつーか、あいつと全く同じ存在になるなんざ今の俺からすりゃ勘弁だしあいつからしてもそうだろ。姿形はおんなじでも俺は俺なんだしな」
「・・・お前はアッシュに対してこだわりはないのか?お前の様子を見る限り、そういった様子がないように思われるが・・・」
「こだわりねぇ・・・俺からすりゃ特にはないな」
そんな声に軽くおどけるように気持ち悪いとわざとらしい様子で振る舞うルーク。リグレットは全く負の感情のない様子にこだわりと聞くが、ルークは首をひねりながらあっさりないと告げる。
「まぁ今まであいつが俺に対して抱いてきた勘違いとか因縁みたいなもんに対しては俺自身が決着をつけてやらなきゃいけないって思っちゃいるけど、だからって俺があいつにこだわる理由にはなんないしな。それに第一あいつと俺は一度決着をつけたし、その上であいつは俺の勝手な期待を裏切ってくれたからな。そういったことを含めて別にあいつに何か思うとこなんてないんだよ」
「・・・そうか」
ルークの偽らざる本心、それはアッシュに対しての無関心。そう聞きリグレットはただ一言納得するにとどめる。
(本当に違うものなのだな、アッシュとは・・・)
だがその心中では確かにリグレットは感じていた、アッシュとの明確な違いを。



・・・リグレットが何故そうも違うと断言出来るか、それは自身が想像するアッシュの取るだろう態度がある。

もし今の時間軸のアッシュが念願かないルークを殺したとしよう。その後アッシュが取る行動と心理状態はいかなものかと想像すると、ルークを嘲った上でその事実をいつまでも自身の中で喜びとするだろう事はリグレットの中で確定事項の事だった。おそらくほぼ確実にアッシュはその事実を心の中にとどめおき、いつまでも色あせない喜びの思い出として記憶に残し度々自身らに何度もうざったい程に語ってくるのが容易に想像がつくくらいに。

しかしその点ルークは違う。何せルークはアッシュに対し、何ら特別な感慨を抱いてないのだ。アッシュの暴走すら容易にするほどの気持ちに対し。

・・・ルークとアッシュの違い、それは想いの強さに考え方の差。それを今リグレットは改めてまざまざと思いしった。



(今となっては思うな・・・被験者だからと言ってレプリカより無条件に優れているなどということはないということを。そればかりかレプリカが被験者を追い越す事すらも有り得る。少なくとも人間性というものに関して言うならルークの方が断然いい・・・これは環境に考え方もあるのだろうが、やはり愚かだったのだな。レプリカは見下すのが当然だと思っていた前の私は・・・)
・・・アッシュとそれなりに長く付き合ってきたリグレットだからこそ、アッシュの激しさを知っている。だから今となってはレプリカは同じ肉体を持ってはいても様々な面で劣化という意味ではなく個人差が出てルークを、ひいてはレプリカを違う人物なのだと認識出来た。リグレットはそんなことを思い、フッと自嘲の笑みを口元に浮かべた。











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