必然は偶然、偶然は必然 第二十一話

「あ~~~・・・気持ちいいな、この空気・・・」
人の姿も周りにはなく、静かな中。ルークは軽く体を伸ばし気持ちよさげに表情を緩める。
「楽しかったな、さっきは・・・」
そして思い出すは先程までの食事の時間の事で更に表情を緩めるが、少し寂しそうに変わる。
「つってもあとちょいで終わりなんだよな、あいつらとの旅は・・・」
そうなった理由はそろそろになるクラトス達との別れで、寂しげにそう呟く・・・そう、改めて言葉にされて思い返したのだ。この旅が終わればもうクラトス達は元の世界に戻ることを。それはルークにとって寂しい事だった・・・が、ルークは首をフルフルと横に振り表情を引き締める。
「・・・ま、わかってた事だしな。そうなることに、そうしなきゃいけないことは。くよくよしてもしゃーねーんだ、あいつらを元の場所に気持ちよく戻すためにもな」
しかし今のルークはそこまで子供ではない。故に新たに気を入れ直していた、きっちりやろうと。
「・・・そろそろ戻っか、あんまり遅くまでここにいてもしょうがねーし・・・ってあれ・・・?」
ただそんな真剣な空気を自身で誤魔化すよう軽く笑いながら戻ろうかと口にすると、視線の先に見えた物にルークは首を傾げる。
「・・・む、ルーク・・・どうした、こんな時間に?」
「いや、ちょっと歩きたい気分だったからここに来たんだけど・・・お前こそどうしたんだ、リグレット?こんな時間に出歩くなんて」
「いや、少しな・・・」
その視線の先から歩いてきたのはリグレットで相手もルークがいることに気付くが、自分はともかくとらしくないと言われリグレットの表情が暗くなる。
「・・・気晴らしに来たんだ」
「気晴らし?」
「あぁ・・・さっきの時間は楽しかった。それこそ弟が生きていた時以来か・・・あんな時間は他の六神将やヴァンといた時にもなかった。だがそう考えた時にふと思ったのだ、私は何故あそこまで盲目にヴァンに付き従っていたのかとな・・・」
「あぁ、そういうことか・・・」
続けて気晴らしと言われ前の自分の事を独白するリグレットにルークも納得する、その過去の自身への想いを。
「・・・余裕がなかったから、だろ」
「余裕?」
だからこそルークは告げる、似たような想いを抱いた経験がある故に自身の感じた言葉を。
「まぁこれはリグレットだけに言えた事じゃなくて他の六神将にも言えることだけど、ヴァン=グランツって人物の元にいたからこそ余裕なんて皆無くなったんだと思うぞ俺は。実際あのパイナップルは今の俺から見たら余裕なんてあるようには見えないしな」
「・・・余裕がなかった、だと?私達だけでなく、ヴァンまでもが?」
「あぁ。前聞いた話だと人間って複数人いると、一番強い感情を出す人間にその感情の影響を受けやすいんだってよ。連鎖反応って言うのか、そう言うの?」
「しかしヴァンがそうとは・・・」
「まぁ俺もそんな風には最近までは思っちゃいなかったけど、ワイヨン鏡窟で俺の言葉に露骨に反応した姿見て考えたんだよ・・・それで俺なりに考えて出た結論が外殻大地降下やら俺の洗脳やら自身の手の内に来るだろう人材の確保やらと、自分の思う預言のある世界の破滅への手段にしか興味と余裕がなかった・・・だからそれ以外の事をしろって言われたり違うことを考えたりするよう言われたなら・・・酷く無力に近くなるんじゃないかって」
「!!」
・・・そしてそのままに滔々と告げたルークの考えにリグレットは最大限に驚き目を見開いた、自分どころかヴァン達までもが無力だったと。
「実際俺もそうだった、自分の知識の無さに屋敷の狭い世界の中で生きてた時は師匠って存在があればいいって心の中の大半を占めてた。その結果色々後悔する事を起こしてしまった・・・」
「ルーク・・・」
「・・・今がかつての過去を変えた上での出来事ってのはわかってる。それで今アクゼリュスの人は生きてるって事も。でもあの時起こしてしまったことの記憶は今も尚俺の中から消えないんだ。余裕も何もなく、ただ師匠の言うことを聞いてればって思い込みの記憶は・・・」
「・・・それをかつての私達にヴァンはさせてしまったのだな・・・」
更に続けて自身の過去を振り返り後悔を多大に滲ませたルークの声に、リグレットはかつてと違い嘲りを向けることなくただ痛ましげに言葉を漏らす。









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