必然は偶然、偶然は必然 第二十一話

「・・・まぁとりあえずはフローリアンとの顔合わせも済み、どういったようにその身柄を扱うかは決めたんだ。まずはここまでにしてもいいだろう。ただそうするからにはまだ必要な事があると私は思うのだが・・・」
「あら、何よディムロス?」
リグレット達の妙な空気間のやり取りを見つつ自身の思うところについての発言をしようとするディムロスに、ハロルドを代表として一同の疑問の視線と声が向けられる。
「いや、そうするのであればウッドロウにダアトにおけるある程度の地位が必要なのではないかと思ったのだが・・・発言権がなければ何も出来ないだろうからな。その辺りはどうなっているんだ、導師?」
「そういうことですか・・・」
それで出てきたのは地位に関する件。ディムロスの疑問の声にイオンも頷き、周りを見渡す。
「・・・その事については皆さんが戻ってくる前に少しお話はしました、ウッドロウさんにリグレットと。ですが今の時点では神託の盾としてもですが詠師などの地位を用意してそこに入ってもらうにはいささか早いとウッドロウさんから言われました」
「何・・・?」
「・・・少し後々の事を考えてね」
そして返ってきたのはまだ早いとの答え。ディムロスは怪訝そうに声を上げ、ウッドロウが真剣な面持ちで話に加わる。
「今のダアトは色々と厄介な事態になりかねない材料がある。例を上げれば大詠師の起こしてきた行動に、謡将の取ってきた行動。そしてそれらの風評・・・世界中にそれらを知られた今に、唐突なダアトの改革案をぽっと出の私から明かすのは波乱を生みかねないと私は考えている。またダアトの混乱を招くのかと私だけでなく、私を連れてきたイオン君にも批難が来る形でだ」
「・・・じゃあウッドロウはその問題が落ち着いたら出ようって言うのか?」
「いや、少し違う。私が考えるベストなタイミングは第七譜石の真実、これを世界に公表してからだ」
「譜石の真実・・・?」
「そう、今のまま預言を詠み続ける風潮を君達は断ち切るためにも預言の真実を明かすのだろう。そしてそれがうまくいけば自然とこれからのダアトについても色々と考えざるを得ない状態になってくる。その時が私が動く時だと思う。その時になればイオン君の発言力もある上、人々が意識の改革をしなければならないと自覚している頃だろうから私も発言の出来る場に入り込めさえすればなんとかなると思う」
「・・・成程、まだダアトが完全に変わるには少しだけ早いって事か・・・」
「そう私は考えている」
・・・ウッドロウの説明は皆の(アリエッタとフローリアンは話が大きすぎてポカンとしてたが)納得を得ていた。今の不利益に未来の好機、それを滔々と話されルーク達が頷く様子にウッドロウも微笑を浮かべて頷く。
「とは言えそれらを成す為にも私はこのダアトに住む用意をしなければならないからね。外部の人間では流石に口出しもしにくいだろうし。だからフローリアンにもルーク君にも了承を取れた事から、私はダアトに住む事にするよ」
「ちなみに住む場所については問題ありませんよ。ヴァンやモース達がいなくなったことで大分寝床は空きましたし、二人が住む分には十分過ぎるスペースがあります」
「そっか、そういうことなら安心だな・・・」
だがそうするからにはダアトにちゃんとした形で住む必要があると言い、イオンもその点は大丈夫と理由つきの太鼓判を押したことにルークは納得した。








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