必然は偶然、偶然は必然 第二十一話

「・・・すみません皆さん、時間を取ってしまって・・・」
「いや、構わないけど・・・まだ時間を取っても構わないよ。まだ数日は時間はあるだろうから、私達はしばらく外に出てもいいけれど・・・」
「いえ、それには及びません。フローリアンとはそれこそこれから時間がありますので・・・今必要なのはフローリアンも含めて様々な事を決める話をする事です。話をしましょう」
「・・・わかったよ」
少ししてふとイオンはルーク達の方に視線を向け謝ってくるがまだ続けてもいいというウッドロウに、首を横に振ってまっすぐな視線を向けて話をと返す。その力強さにウッドロウはフッと笑み、話をすると了承する。
「んじゃまず何を話すんだ?」
「はい。色々ウッドロウさん達と話し合った結果なんですがフローリアンがどこに住むかと言うことに関しては、ウッドロウさんが保護者という形でダアトに住んでいただくのがベストという形になるという風に話が進みました」
「ウッドロウとって形で、ダアトに?」
それで早速とルークが話を振ると自身らが先に話をしていた中身をイオンは打ち明け、その話を初めて聞くルークを始めとした面々が首を傾げる。
「はい・・・フローリアンはどこにいるのかを考えた上で誰が保護者であるべきか、それを考えた結果です。まずマルクトは立場的に言って受け入れていただくにはこちらの事情を説明して理解していただかなくてはいけないので論外ですが、残ったキムラスカとダアトのどちらがフローリアンの為になるかと言えばダアトかと思われます。もしルークとキムラスカの方に行ったならおそらくフローリアンは礼儀作法の面で苦労することになり、ダアトに残ったなら被験者に僕の事を気にしながら動くことになる・・・その2つの内どちらかがマシなのかとそれを考えた時に、僕はフローリアンがこれからしばらく住むという点で見るならダアトの方がいいと僕にウッドロウさんは考えました」
「あ~・・・確かにそうかもな。俺もバチカルに戻ったら屋敷か城かにずっといることになるだろうから、そうなるとフローリアンにとってはキツいだろうし・・・」
イオンは一つ頷いた後にどこがフローリアンの為になるか、その根拠を語るとルークも自身の立場もあって苦々しげに後頭部に手を当てる。
「それに誰がフローリアンと一緒にいてやれるか、と言うのも重要になります。フローリアンなら心配はないとは思いますが、色々と・・・ね」
「っ・・・あぁ、そうだな」
更に保護者の話になった時に一瞬暗い影が落ちたのを見て、ルークも一瞬影が落ちかけた。






・・・以前フローリアンの身柄を引き受けたのはアニスを含んだタトリン一家であるが、その成長に関しては周りもフローリアンを暖かく見守ってくれたためそれほど心配をしているわけではない。だがだからと言って以前のようにタトリン夫妻にその身柄を預けようなどとはイオン達は思わない、今は信用がないと言うのもあるが以前の事があるために。

だが以前タトリン夫妻とフローリアンが何があったかと言えば何があった訳ではない。むしろ何もなかったのが問題なのだ。アニスの愚行をただわかってほしいとだけしか言わず本当の意味でその是非を考えもしなかったタトリン夫妻だが、フローリアンが行動を起こした時も言葉ではアニスと争うのはやめて欲しいと言うだけで結局行動で止めることなどしなかった。本当ならアニスの過ちの時にもだが身を呈してでも止めるべきであるはずなのに。

・・・そんなタトリン夫妻の事をフローリアンは見えない場で悲し気な瞳を浮かべる以外に出来なかった。何を言われても何も心に響かないその姿と声に。

ルークからしてもイオンからしてもあのようなフローリアンの姿は二度と見たくはなかった・・・だからこそフローリアンの保護者というのは重要な問題と言えた。これからフローリアンが健やかに成長するためにもだがまともな人物の元で暮らせるようになることは。








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