必然は偶然、偶然は必然 第二十一話

・・・それでアルビオールは一路ダアトに向けて飛び、然程時間もかからずダアトの近くまで辿り着いた。






「・・・待っていたよ、皆」
「ウッドロウ、それにリグレット・・・待っててくれたのか?」
「あぁ」
それで街中に入った時に見えたウッドロウとリグレットの二人の姿に、ルーク達は表情を緩める。ちなみにフローリアンはケセドニアで買った服も着て黒い色が髪に定着したことで、体型に顔の造りと目の色以外は違うので一概にイオンと結び付けるには厳しいと言えるだろう。
「私達の後に付いてきてくれないか?導師の私室にではなく別の場所で話をすることにしているから、案内が必要でね」
「あぁ、わかった」
それで案内をするために来たと言うウッドロウにルークを筆頭に頷き、一同は二人の後に付いていく・・・









・・・それでウッドロウ達の案内の元、着いたのは教会の中の奥まった場所にあるとある部屋。その扉を開けルーク達が部屋に入るとイオンがいた。
「・・・お帰りなさい、皆さん。そして・・・初めまして、フローリアン」
「・・・うん、初めまして」
笑顔を浮かべ皆を迎えるイオンだが、最後に向けられた空気の締まった挨拶にフローリアンも神妙に頷いて返す。
「・・・なんて言ったらいいんでしょうね・・・色々話をしたいと思っていたんですが、いざ会ってみると何を話していいかわからないですね・・・」
「・・・うん、僕も・・・ルークから話を聞いたけど、何を言っていいのかわからない・・・」
ただどちらも戸惑ったような笑顔を浮かべなんとも言えない空気が場に広がる・・・この辺りは同じ人物のレプリカであり本物の代わりとなった者とそうでない者、本人同士でしかわからない何かを感じているからだろう。現にフローリアンの事を覚悟していたイオンもいざこの場では言葉を自由に紡げずにいる・・・
「・・・すみません、フローリアン。貴方に会いたいと思っていたはずなのに、ろくな言葉も出てこなくて・・・」
だからこそ自分の不甲斐なさにイオンは頭を下げる、動揺してる自分を情けなく思いながら。
「いいよ、イオンは謝らなくて」
「えっ・・・?」
しかしフローリアンから出てきた言葉にイオンは少し呆けたように頭を上げた、明るく笑顔で謝らないでいいと言われたことで。
「だってイオンもうまく何も言えないんでしょ?だったら僕と一緒だよ、だから気にしないでよ」
「・・・ですが・・・」
「だったらイオンは何かすぐに言える?」
「・・・いえ・・・」
更に続けて無垢で純粋だからこそ言えるてらいのない言葉にイオンは尚も言葉を探そうとしたが、フローリアンが首を傾げながら問いかけた言葉に首を振る以外に出来ない。
「僕もそう・・・イオンを前にしたら何を言っていいかわかんなくなっちゃったしね。でもイオンはこれからは僕と一緒にいてくれるんでしょ?」
「・・・えぇ、出来る限りはそうしたいと思っています」
「だったら少しずつ言いたいこと言お?今すぐ全部言わなきゃいけない理由なんてないんだからさ!」
「!・・・フフ、そうですね・・・今言わなきゃって焦る事なんてないですよね」
それで途端に自分もと声を落とした後に問いかけを向けられイオンは頷くが、なら急ぐ必要はないと輝く笑顔をフローリアンから向けられようやくハッとした表情になって、イオンも納得して笑みを浮かべた。
「すみません、フローリアン。色々考えすぎてました、僕が貴方の為にもしっかりしなければいけないと思って・・・」
「うん、別にいいよ」
「フフ、ありがとうございます」
その笑みのままに謝りの言葉を向けるイオンだが、フローリアンが至って気にせず笑って首を横に振ったことで完全に落ち着いた様子で礼を述べた。









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