必然は偶然、偶然は必然 第二十一話

「・・・本当にフローリアン、なのか・・・?」
『あぁ、少々見つけるのもだがここにまで連れてくるのに色々難儀してな。それで仕方なくフローリアンの身柄を確保するだけで我は済ませ、そなたらが来るのを我は待っていたのだ』
「ちょっと待て、ローレライ・・・確か以前はヴァンが地核からフローリアンを連れてきたんだよな、話を聞くと。それなのにヴァンが自力で地核からフローリアンを連れてくる形で戻ってきたのに、なんでお前にそれが出来ないんだ?」
ルークが呆然とその名を呼びながら近付く傍らローレライがそれを肯定するが、そこにセネルの疑問が入り込んでくる。
『その事に関して言えば我に確固たる肉体がなかったのが理由だ。我が第七音素の集合体であるのは知っていると思うが、物理的な介入などはユリアの血族もしくは完全同位体であるルークの身を介さねば我はそうそうは出来ん。ただ何もない場所で人一人を持ち上げるくらいなら何とか我だけでも出来ないことはなかっただろうが、地核の中では今の我でもそこまで自由には動けんのでな・・・』
「つまりさっきの超振動はその、物理的な介入をさせるために放たせたって事か?地核って場所から出ながらもフローリアンを持ち上げて地上に出るための道を作るために・・・」
『そういうことだ』
その問いにローレライは答える、自分一人では無理があったからこそ超振動をルークに助けの為に使わせたのだと。
「ローレライ・・・そう言うことは早目に言ってくれてもよかったんじゃねーのか・・・?」
『・・・本来ならそうしようと思っていたのだが、我一人では無理があると言ってしまっては妙な心配をかけかねんと思ってな。故に言えなかった・・・済まぬ、ルーク』
「あ・・・わりぃ、そんな事情があったなんて・・・」
そこにルークが何故言わなかったと強い視線を向けるが、気を使ったつもりと申し訳なさそうに返された言葉にすぐさま気まずげに謝る。いくらフローリアンの事が意外で今知ったからとは言え、八つ当たり同然の事をしたことに気付いたが故に。
「ねぇ、それよりフローリアンを目覚めさせなくていいの?見たとこまだ目が覚めてないようだけど」
「あっ、そうだ・・・ローレライ、どう起こせばいいんだ?」
『誰かを起こすようにすれば起きるだろうが、時間が経てば自然と起きるだろう。だが今のフローリアンはザレッホ火山に落とされた時の記憶で止まっている・・・気をつけよ』
「あ・・・うん、わかった・・・」
そこにハロルドが場の空気を戻すように起こすことを提案しルークも改めて気を取り直して質問するが、ローレライの注意に複雑げに顔を歪めて頷く。
「・・・よし・・・フローリアン、起きろ・・・フローリアン・・・」
「・・・う、ううん・・・・・・えっ!?だ、誰・・・!?」
そして覚悟を決め倒れているフローリアンに近付き膝だちになって、ルークは名前を呼びながらその体を揺する。その揺れにフローリアンもようやく長い眠りから覚めるが、はっきりと目を覚ましたフローリアンは明らかな怯えを含ませながらその身をルークから離してガタガタと震えだす・・・その姿を見てルークだけでなく、他の皆も悲し気に表情を歪めた。ハロルドまでもが微妙に苦い表情になる形でだ。









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