必然は偶然、偶然は必然 第二十話

現時点でルークとイオンの中ではナタリアという存在の評価は無きに等しい物であるが、インゴベルトや公爵に関してはまだそうではないと二人は見ていた。何だかんだ言っても一応は王女として福祉政策の充実には貢献してきた事や、今までの人々の評価も考えれば一概にただ切り捨てるには惜しいものがあるのも事実ではある。

しかしインゴベルト達がそんな物を拠り所にしたとて将来を考えれば意味はほぼないに等しいのだ、ルークとの不和が間違いなく確定しているのもある上余計な政策にまでしゃしゃり出てくるのは目に見えている。

・・・そもそもを言うなら政治に王女としての時ならともかく、女王としての地位を手に入れてからも関わってきたのもあまり感心できないとルーク達は思っていた。政治に携わる女王が悪いとは言わないが、あくまで政治の主導は余程でなければ女王ではなく王であってしかるべきである・・・あくまで結婚こそはしても国のトップに立つ王という存在は一人であるべきで、王と同権の存在が二人もいるなど争いの種になりかねないのだから。その点は権力争いも兼ねたような争いをするようにアッシュと仲違いを起こさなかったから良かったようなものだが、暴君が二人もいるような状態を作ったことはどちらにせよいただけないものであったと言えた。

だがルークもイオンも同じような轍を踏むつもりはないし、そうするためにはナタリアを絶対に女王として君臨させてはいけない・・・故に最終的な決定権をルークが得たのに加え、ナタリアに対するインゴベルト達の信頼が失われたのは非常に大きな物だった。これがせめてナタリアがもう少し違った切り口から王女として相応しい発言をしたのならまた別だったであろうが、浅ましく記憶や約束にこだわりすがりつこうとする姿を見ればそれはインゴベルト達とて快く思わないはずがないだろう。そしてインゴベルトからそうと決まった、決めたからこそナタリアの命運は決まったとルーク達は言えた。



・・・これより先ナタリアが試しの期間を経て、うまく信頼を取り戻せるかは相当に可能性は低い。生来の性格故に衝突があると見て。

だがそれをうまく切り抜けたとて、けしてルークは何があろうとその手を取りはしない。何故なら決定権は自身にあるのだから。

そしてインゴベルト達もナタリアの言葉を聞いてルークの考えを受けた以上、ただすがりつこうとするだけのナタリアを無条件に擁護しようなどとは思わないだろう。

・・・後は時が来るのを待つだけ、ナタリアがもう二度と戻れない位置にまで落ちるのを。そうすれば自然と終わると、ルーク達はそう思い至っていた。



「・・・では決まりですね。我々はモースを処断する時には事実を全て明らかにしますので、陛下は今の決定をキムラスカの方々に説明をお願いします」
「あぁ、わかった」
「ありがとうございます・・・では話の続きにまいりましょう」
「話の続き・・・?」
・・・そしてそうと決まったからこそ、話の流れを引き戻す必要がある。空気を見てイオンは後の対処について述べインゴベルトに頷かせ頭を下げた後、早速と次の事をと切り出す。






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