「・・・無論、今申し上げた事はあくまで私から見た円滑な解決策と言うだけで陛下にルークがどのようにするかを決める物ではありません。ですが私の意見も一考する価値はあると思いますが、陛下はいかがお考えでしょうか？」
「う、むぅ・・・正直なんとも言えん・・・そうするとなれば決定権はわしにではなく、ルークにナタリアの事を最終的に委ねることになる・・・重要なのはルークがどのように思うかだが・・・」
イオンはそこで発案者として受け入れるかどうかをインゴベルトに問い掛ける。だがインゴベルトはチラチラとルーク次第とルークを見ながら返答を濁す・・・その様子からして悪い考えではない、それでいて結果がどうあってもルークに責任者になってもらいたいと思っているのだろう。インゴベルトは。



「・・・陛下が是とおっしゃるならば、私はそれで構いません」



「っ！？・・・そ、んな・・・！」
・・・そう見てとったからこそルークはハッキリと答えた、インゴベルトの許可があるならそうすると。だがその返答にナタリアは一瞬で涙を目から溢れ出させた。まさかというナタリアにとっての中身に。
「・・・よいのだな、ルーク？」
「はい。元々殿下の件について案を出したのは私でその責を取るのも私と言う気持ちでいましたから、殿下の事を判断するという責務も必要とあれば引き受けようと思います」
「・・・そうか」
インゴベルトが改めて伺いの声を向ければ、真摯な表情で必要ならと返したことに重く頷き公爵に視線を向ける。
「そなたもそれでよいか、クリムゾン？」
「・・・はい、私もそれでよろしいかと」
「・・・ならば決まりだな」
「お、お父様・・・！」
次に公爵に確認を取れば是と少しの間はあったものの返ってきたのでインゴベルトも決定と言わんばかりの声を上げ、ナタリアはたまらず立ち上がってインゴベルトにすがるように近付く。
「・・・ナタリア、悪いがこれは決定事項だ。お前には拒否権はない」
「で、ですが私とルークは・・・」
「まだ分からんのか、お前は？そうやって記憶や約束にこだわったからこそ今このような結果になったことが・・・そしてそれでも尚不満を申すと言うのであれば命まで取りはせんが、試しの機会を与えず平民へと降格させてもよいのだぞ？」
「っ！？」
だがインゴベルトは首を横に振って覆す気はないと示したが、諦め悪く記憶に約束の事を持ち出そうとしたことにまだ何か言い続けるなら即刻の処分を告げると言いその身を言葉の衝撃で後ずらさせた。
「そなたの立ち位置が非常に微妙な物であることは先程の話から承知しているはず・・・だがそれもそなた自身の働き、そして心がけによりルークは取り返せるようにと妙案を出したではないか。それを尚もわしやルークにすがるだけで取り下げてもらおうなどとはいささか都合がよすぎるとは思わんかったのか？」
「っ・・・」
更にその行動の都合のよさを指摘する言葉を向ければ、ナタリアは更にたたらを踏み返答出来ず息を詰まらせる様子にインゴベルトは目を伏せる。
「・・・ナタリア、もうこれ以上何も言うな。まだ同情に訴えかけるようであれば、それこそ挽回の機会をもう与える間もなく終わらせる。それがどうしても嫌だというのならこれから行動で示せ、自身が王女にルークの相手に相応しいのだとな・・・いいな？」
「・・・はい・・・」
そのままインゴベルト自身も辛いと言わんばかりの声色で脅しをかけた上で決定に従えと告げれば、ナタリアもようやく諦めることにしたのか力なくうなだれ一言だけの肯定で返す。



・・・この瞬間、もうナタリアが王女として返り咲けない事はルーク達の中でも確定した。










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