必然は偶然、偶然は必然 第二十話

「・・・殿下、これは今まで貴女が取ってきた行動の積み重なりの結果・・・有り体に言うなら、ツケを支払う時が来たんですよ」
そんなナタリアにルークは最後の追い込みをかける、もう逃げられない・・・もし万が一王女殿下の地位に返り咲いても、希望などないと指し示す為に。
「もし殿下が自らの立場を弁えバチカルに残り執務に殉じていたなら、モースとて殿下の事を言わずに済ませていたでしょう。何せ問題行動を起こしていないのですから、敢えて殿下の事実をお伝えする理由もない・・・つまりはそれが例え預言保守派の企てだったとは言え、殿下自身の自業自得だったことは今お話をしたことからお分かりのはず。そしてそれを支払うべきは今なのです」
「・・・ルーク・・・」
「はい、なんでしょうか?」
「・・・もう私がそうせねばならない、と言うのは貴方の話を散々聞いて分かりました・・・ですがその、もう少し言い方があるのではありませんか?・・・思い出してください、ルーク・・・私と貴方が交わした約束の事を・・・!」
尚も厳しい言葉を投げ掛けるルークに、ナタリアは弱いながらも力を込めた訴え・・・かけがえのない約束という記憶を持ち出してきた、自身との思い出を思い出させる為に。



「約束?そのような貴女の為にならないもの、例え記憶にあったとしても今関係ありませんよ」



「!?」
・・・だが最後の砦と言えた記憶の事をどうでもいいとばかりにあっさり否定されたことに、ナタリアの表情と瞳が揺れた。悲しみと驚きの入り交じった物になって。
「むしろ今この場ですら記憶に約束と言い出された事・・・正直な所で言えば私は不愉快にすら思えました」
「なっ・・・!?」
そればかりか不愉快と斬って捨てるように続けたルークに、今度は絶望を浮かべた表情で絶句した。
「今この場で重要なのは外殻大地降下は勿論ですが、どのように殿下を公平に裁くのかと言う問題です。なのにと言うのも妙な話ですが、殿下はただ私に恩情にすがるようなことばかりを何度もおっしゃる。挙げ句の果てには記憶に約束・・・開き直ると言うわけではありませんが、私はその約束に記憶と言うものはどうあがいても思い出せません。なのにただそれにすがるばかりの殿下は今この場ですらそれを思い出せとおっしゃる・・・個人的な気持ちとしても公人として見ても、殿下の態度はいただけない態度と私は感じています」
「!!」
更に続いた言葉、そして最後に疲れたような表情で首を横に振るルークにナタリアの目に途端に涙が浮かんできた・・・ナタリアも流石にわかったのだろう、その姿に声は本音しか語らず心底から呆れていてかつ不愉快とルークが本当に思っていたと。
「ルーク、それは本気でおっしゃっているんですか?」
「・・・会うたびに口にされる言葉が約束に記憶と、失われた物ばかりを見て今の私に望むのはそればかり・・・これで全く嫌気がささないというのであれば、私はその者の神経を疑います。事実、私がそう漏らしていた事を父上ならご存知のはずですが・・・」
「それは本当ですか、公爵?」
「え、えぇまぁ・・・流石に私もルークの負担もあるので出来ればご自重いただけるようにとおっしゃったのですが・・・」
「成程・・・そうはならなかった、と言うことですか」
そこにイオンが確かめるような言葉をかけルークが公爵に話題が行くように誘導、そしてイオンが改めて問えば若干の動揺を見せながらも肯定と自重を求めていたことを認め納得する。









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