「・・・と言うわけですが、それらを決めるのは殿下です。いかがなされますか？」
「・・・はい、そうすることが混乱もなくと言うなら従いたいのですが・・・ルーク、貴方は手伝っていただけないのですか？」
「・・・私が殿下のお手伝い、ですか？」
それで過去について思う所を心中からひとまず閉め出し、ルークは是非を問う。その問いにナタリアは頷きはしたものの手伝うことを望むようすがる視線と声を向け、ルークは何故と首を傾げる。
「それは、その・・・私と貴方は婚約者では「ありません」・・・え？」
「今先程私は言ったはずです。暫定ではあるが婚約解消の上でと。それで今殿下は私の話をお受けになった・・・まだインゴベルト陛下からの意向をお聞きしていませんが、殿下が是と言った以上婚約はもう解消されたものになります」
「！？」
ナタリアは口ごもりながらも婚約者であることを出そうとした・・・だが途中で口を挟んできたルークの言質を聞き、驚きと混乱に目を見開いた。後はインゴベルト次第だが婚約は解消されると聞き。
「・・・ちなみに陛下はどのようにお考えでしょうか？今私が申したことは」
「う、うむ・・・わしとしてはナタリアが頷いたこともあるが、それでいいと思っている。そしてそうなればナタリアにルークが関与するのは歓迎出来る物ではない」
「確かにそうなるだろうな・・・婚約者であるルーク殿がナタリア殿下を断腸の思いで試そうとしているのに、その当人同士が助け合っているとなれば茶番と見る者がいてルーク殿まで立場を悪くしかねん。そうなれば目論見はご破算になるだろうな」
「！！」
すかさずルークが問いかけを向ければ最初は動揺しながらも賛同を示すインゴベルトに、ピオニーも入って補足を入れるとナタリアの顔が一気に蒼白な物へと変わった。
「・・・ル、ルーク・・・」
「なんでしょうか？」
たまらずか細い声を上げるナタリアだが、ルークはただ淡々と返事を返す。
「あ、貴方は・・・私を見捨てるというのですか・・・？」
「見捨てる？・・・フフ、おかしな事をおっしゃいますね。私はただもう貴女が貴女のままでいられない状態になっている。そう理解していただこうと思っているだけですよ？」
「え・・・？」
・・・ナタリアからすればルークが自分を庇わないのは自身に対する背信とでも思っているのだろうが、それはナタリアだけに都合がいい考え。責めるような視線を弱く向けられるがルークは微笑を浮かべ穏やかに返し、ナタリアは訳が分からなそうに声を漏らす。
「このような言い方は失礼かと思いますが、貴女は自らが起こした行動の意味に重さという物を理解されていない・・・そう私は感じました。そしてこれからもそうするとなれば当然貴女にのし掛かってくるのですよ。貴女が偽者であるという事実は」
「っ！？」
「氏より育ちという言葉がありますが、殿下が殿下として生きてきた時間は否定出来ません。ですがそれが真実王女殿下として相応しいと思えるか否か、判断するのは民に貴族達です・・・そしてそうなれば私がいかに殿下を助け支えようとしたところでその立場に甘んじ、態度を改める事が出来ないようであればどうにもならないでしょう。いえ、むしろ私が無闇に手を差し出せば殿下は変わらなかったと見られる可能性が高い。それこそ甘えと取られる形で」
「・・・っ！」
「だからこそ私は殿下には手を差し出さない事にするんです、これは殿下自身の問題なのですから」
そんなナタリアにルークは偽物とストレートで辛辣に言い、更に手を出すことがマイナスになると言った事でナタリアは言葉を無くす以外に出来なかった。










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