必然は偶然、偶然は必然 第二十話

・・・確かに偽物と知りつつ仕えてきたのは事実であろうが、だからと言ってそれが本意で仕えてきた物とは限らない。何せナタリアの事実を大々的に公表したならキムラスカが更なる混乱に陥ることは容易に想像出来たのだ。そう言った混乱を避けるためにやむを得ず口をつぐむように言われて、これまで通り仕えるように言われた者達もいる。そういった裏事情を踏まえて見れば、全員が全員同じような気持ちを持ってナタリアに仕えていた訳ではないのだ。

だがそれでもそれまでにそんな不満が爆発するようなことがなかった理由は一つはナタリアが得意な福祉政策を担当していたことがあり、更にもう一つ言うならアッシュが帰ってくるまでインゴベルトが政治を主導していたことがある。この二つの理由によりナタリアは特に目立った失敗をすることなく、貴族達の信頼もそこまで低下することはなかったのだ・・・しかしアッシュ主導に政治形態が変更した事から、その信頼が一気に変化するものとなった。

最初こそ強引な失敗をしてもまだなんとかなっていたのだが、それらが続くにつれ二人の信頼はすぐさま下降していった。アッシュは全体を見ても政治経験の不足に加えて独裁政治の感があり、ナタリアはそんな相手をただ立てて同意した上に福祉政策を除いて慣れない政策に関しては現実味を帯びない政策ばかり口に出してくる(例を上げるなら軍備に関してマルクトと和平を結んだのだからそこまで人員に費用を割かなくていいだろうと縮小すると言い出したのだが、それが様々な負担のないよう段階を踏んで縮小しようとするのではなくいきなりギリギリイケるぐらいの規模でやろうとした。そういった事をすればいきなり必要なくなった人間達の職に加え、使う予定だった予算の枠組みを大幅に考え直す必要に労力があるのを全く考えない形で)・・・そんな状況になれば偽物と聞いて微妙な想いを抱く人物がいるのもある意味で当然であり、更に言うなら偽物であることをさも正当化するよう言った上で自分の女王という立場を鼻にかけた上から物を見た発言に反発が起こるのは当然と言えた。

・・・そのナタリアの発言は一斉に貴族達から忠誠心を失わせる物となった。そしてそれと同時に諦めを植え付けもした。その貴族がほぼ弁明を許されずアッシュに処断された事で。故に無茶としか言いようがない発案だけは何とか食い下がって止めるように動くが、そうでないならアッシュ達の機嫌を見極めた上で軽い注意を促す程度に納めていた。だがそんなもので国がまともに動くはずがなく、貴族達は諦めるか逆にうまく取り入って癒着するかマルクトに亡命するか・・・そんな3つの行動のいずれかとパターン化することになり、キムラスカの上層部はそこからまたガタガタになっていった(尚その時にはせめてもの抵抗とナタリアの事を偽物と噂を流す者も多々いて、アッシュは本物と言い張る方がナタリアを守れると考え噂を消すことに奔走していた)。






(・・・あの時お前は自分の身にプライドを守ろうと咄嗟にあぁ言ったんだろうけど、今度はそうはいかねぇぞ。前はアッシュや叔父上、それにその地位に守られてたけど今度はそうはいかねぇ。偽物ってハッキリ認識された上で自分の実力だけでやってみろよ。まず間違いなく自爆するだろうからな。人付き合いにおいても実力においてもな)
そんな未来にナタリアの実力を見たからこそルークは確信していた、全く慣れない上に居心地の悪い環境に放り込まれたら自爆をするのは確実と。











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