必然は偶然、偶然は必然 第二十話

「・・・これで晴れて和平成立、ですね」
・・・インゴベルトにピオニー、両者が共同で書いた和平を誓約書を持ちイオンは確認を取ると共に笑顔を浮かべ頷く。
「・・・では導師、これからどうする?和平を結んだはいいが、それでこのまま各自国に戻って外郭大地の降下に取り組めばいいのか?」
「いえ、それだけでは少し弱いのでモースのやってきたこと・・・それをダアトの総意として共に発表すれば人々の信頼を得られるかと思われます」
「・・・っ!」
事態が一段落したことを確認しピオニーが後の事を聞くと、イオンがモースの事を付随させて擦り付けると言ったことに大人しくしていたナタリアの表情が一気に青ざめた。
「・・・導師、確認するがモースのやってきたことを本当に公表するのか?」
「はい、それは避けられる事ではありません」
そんなナタリアを尻目にインゴベルトが慎重に確認するよう声を向けてきたので、イオンは確かと頷く・・・インゴベルトからしてもナタリアからしても、モースのやってきたことを明かされるということはイコールナタリア入れ換えの事実もある。そこはどうしても知っておかねばならないと、インゴベルトは考えたのだろう・・・それがルークにイオンの望む、ナタリア排斥のシナリオを担ってしまっているとも知らず。
「こちらは遅かれ早かれモースの事実を公表することはもう決定しています。彼はダアトだけでなくキムラスカにマルクトまでもを巻き込み到底許されるはずもないことをしてきました。ですがモースも元はと言えば大詠師という地位についていた人間・・・そんなモースを罪状も明かさずただ処断を下す、などということは出来ません。ですから彼の罪状を明かすなら全てを明かすべきと私は思っています・・・ナタリア殿下には申し訳ない事をすることになるでしょうが」
「・・・っ・・・!」
導師として・・・毅然とした顔でイオンは語る、モースを処断する決意に加えて罪状を全て明かしたいと思っていると。だがその意志はナタリアからしてみれば驚異にしかならず、青い表情のままイオンから視線を横に背け震え出す。
「それにモースのやったことを明かすということはただ預言を守ればいいなどという言葉を抑止するのにも最適と言えるでしょう。このような言い方はいかがな物かと思いはしますがモースの行動は最早預言を守るためとは言え、到底許される物ではない上に預言の達成のみを目的とした場合の悪例として人々に示すことが出来ます」
「・・・確かにそうなるだろうな。一連の流れを聞いてそれでも元大詠師を庇いだてするというなら、それこそ残酷な預言までもを肯定するような人物と取られかねない事態になると見ていいだろう・・・だがそうすればナタリア殿下、と言ってもよろしいか?インゴベルト陛下?」
「・・・うむ、今はまだ国には通達をしておらんからナタリアのままでいい。だがこの話次第ではそれもどうなるか・・・分からんがな」
「っ!」
それで尚もイオンがその益を淡々と述べるとピオニーは納得しつつもナタリアの事をどう言っていいものかと口にし、インゴベルトがそれに答えつつも首を傾げながら複雑そうに漏らした声にナタリアはビクッと体を揺らした。









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