必然は偶然、偶然は必然 第二十話

「・・・そんな・・・ヴァンの目的が預言を覆す事だったなんて・・・それにまさかパッセージリングが無理に崩壊させたら危険な事態に陥いるなど、とても信じられません・・・」
「信じられないと言いますが、全て事実です・・・市長、貴方はリグレットがどのような立場でヴァンと接していたか。よくお分かりのはずです」
「・・・はい」
・・・それでヴァン達の行動に目的を聞き終わったテオドーロは呆然と口を開き、イオンが念を押した言葉に力なくうなだれる。
「・・・導師、一つ聞くが本当にセフィロトを壊してしまったら他のパッセージリングにまで影響するのか?」
「はい、それは間違いないと見ていいと思われます。リングという言葉の通りパッセージリングは繋がりを持っています。その上で元々の事を言うならホドにもセフィロトがあり、そこのパッセージリングが壊された事によりホドが崩落して消えたという事です・・・そしてその衝撃の余波は他のセフィロトがあるリングにも少なからず蓄積され、その最もたる場所が魔界からの障気溢れる地となってしまったアクゼリュスです。そんな状態のアクゼリュスがまたホドと同じく破壊されたとなれば、他のパッセージリングへの負担は計り知れない物となるのは容易に想像が出来ます。おそらくホドとアクゼリュスに繋がっていて近い位置にあるルグニカ平原を支えるシュレーの丘、ケセドニア近辺にザオ砂漠付近を支えるザオ遺跡、更にはイスパニア半島にあるタタル渓谷のセフィロトのいずれかが近い内に崩壊するのは避けられないとのことです。それも誰かがわざわざ壊すようにしなくても自然に崩壊する、と」
「「「「・・・っ!」」」」
テオドーロに変わり今度はインゴベルトが送られてきた手紙の中に書いてあったパッセージリングの件についての真偽を問いただしてくるが、イオンはハッキリと言い切る、3つのパッセージリングが目下危険だと。その断言の仕方にキムラスカの三人とテオドーロは顔色を青くして息を呑むが、イオンはまだ言うべき事は言い終えてない為に話を続ける。
「まぁここでいずれかのリングが最初かと言うのは順番はともかくとしても、遅かれ早かれマルクト側から崩壊していくパッセージリングの衝撃はいずれキムラスカとダアトにあるパッセージリングを蝕むように襲うでしょう・・・そうなればもう後はおしまいです、オールドラントは滅びの結末を避けることは出来ないでしょう」
「なっ・・・何故そのようなことを断言出来る、導師・・・!?」
「おそらくそこまで来ればパッセージリングがいつまで耐えられるかという耐久力はいつ崩落が起こってもおかしくないレベルにまで落ちていることでしょう。そうなればもう到底手に負えるような代物ではありません。それにそうでなくてもエンゲーブという世界の台所を担う場所が崩落したとなれば、その年の食料を用意するのすら危うくなるのは避けられないでしょう。湿地に砂漠、乾燥地帯が領地の大半を閉めているキムラスカからすればこれは致命的なはずです」
「「・・・っ!」」
更に続いたイオンの予想の言葉にインゴベルトとファブレ公爵が息に詰まり、一気に顔が強張った・・・それもそうだろう、パッセージリングの危険に加えてマルクトから輸入しなければ国が食べれない食料事情まで指摘されているのだ。食料を作りにくい条件の土地ばかりが領地のキムラスカからすれば、これは人が生きるに必要な物であるだけに相当に痛いと言わざるを得ない事情であった。
「・・・ですが我々はそのような事態を避けるため、今のこの場を儲けたのです」
しかしと改めて前を真剣に見据えるイオンの言葉は続く。









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