必然は偶然、偶然は必然 第二十話

「・・・お久しぶりです陛下、公爵。一体どう言うことなのでしょうか?」
「久しぶりだな、導師・・・」
そんな光景にイオンがその真意を訪ねながら会話の中に入れば、インゴベルトは少し疲れたように挨拶を交わす。
「・・・本来なら今日このダアトにナタリアを連れてくる予定はなかった。だがいつまでもナタリアを王宮に置いておく訳にもいかなかったからな、本人や周りの声もあってな・・・それにいずれモースの件から事を露見するとあってはナタリアにいつまでも黙っている訳にはいかないと話をして、本人の希望もあって色々と決めるためにこちらに連れてきたのだ・・・」
「・・・そういうことですか」
「・・・ルーク・・・」
訳を言うインゴベルトの姿は疲れを感じさせる物だった。その姿にイオンが納得しつつ視線をナタリアに向ければ、ルークにすがるような視線と力ない声を向けている・・・そのナタリアの姿はルークに救いを求めてる。その上でインゴベルト達は偽物問題でどう対処するか扱いに困ったナタリアを、ルークにどうするか半ば放り投げるように委ねたというのがよくわかる光景だった。
「・・・話は分かりました。ですが詳しい話は大聖堂の中でしましょう。先に向かわれたピオニー陛下を不必要に待たせる訳にはいきませんし、何よりこの場でするような話ではないと思われます」
「う、うむ・・・」
ルークはそんなナタリアから視線を外し大聖堂で話すべきと丁寧に申し上げ、その姿に公爵は戸惑いながら頷く。
「では大聖堂に向かいましょう。我々が先導してお連れしますので陛下達は後に付いてきていただくようにお願いします」
「うむ・・・」
「ルーク・・・!」
「・・・話は後だ、お前は陛下達と共に来い」
「っ・・・はい・・・」
「では向かいましょう」
それでさっさと話を進め大聖堂に向かうと言うルークにインゴベルトは頷くが、ナタリアは優しい言葉をくれと言わんばかりにルークの腕を掴む。だが手を振り払って後にしろと厳しい言葉をかけられた事にナタリアは悲し気に頷くしか出来ず、ルークは一切気にするでもなく出発の声をかけてイオン達と共に先へと歩み出す。



「・・・いいんですか、ルーク?今からあのように突き放して」
「むしろ今から突き放さないと駄目だ、あいつの性格考えると」
・・・ウッドロウ達が程よく距離を空けれるようガードの役割をして歩き、後ろから付いてくるインゴベルト達やナタリアに声が届きにくくなる。そんな中で小声で話を向けてくるイオンに、ルークは冷静な口調で返す。
「あいつは俺が優しくする、もっと平たく言うなら今の微妙な現状から救い出すことを望んでる。それで結果として王女の立場を失わずにいられることをな・・・それで叔父上に父上からすりゃ下手な形でナタリアを排除なんてしたら、預言の入れ換えの事実の公表が後に控えてるから民から変な反感を買いかねない。だから判断を俺に委ねて半ば責任逃れの形で事をしようとしてる。自分の判断じゃないからってな・・・だから下手に希望を持たせる訳にはいかないんだよ。ナタリアを俺が救う気でいるなんて考えられたら、そのまま婚約続行なんて流れをナタリアだけじゃなく叔父上に父上が作りかねないからな」
「・・・成程、そう考えれば迂闊に優しくは出来ませんね」
そのままにルークは語る、ナタリアに希望を持たせる訳にはいかない訳を。イオンはその話を受け静かに納得の声を上げる。
「・・・ま、こうやってナタリアが来ちまったのは予想外だったけど折角キムラスカの陛下自らナタリアを排除する為の機会を用意してくれたんだ。この機会はうまく使わせてもらうさ、この首脳会議の場って言う機会をな・・・」
「・・・そうですね、そうさせていただきましょうか」
そしてルークが笑みを浮かべながらこれはチャンスと言ったことに、イオンも笑みを浮かべ同意をした。ナタリアをこのダアトで片付けようと・・・







15/33ページ
スキ