必然は偶然、偶然は必然 第三話

そして大樹の中に入ると・・・
「「「「みゅーみゅーみゅーみゅー!」」」」
「・・・変わってねぇな、こいつらは」
薄暗い大樹の中で足元に何匹ものチーグル達が侵入者達に来るなと声を上げてくる中、ルークは少し懐かしむよう周りに聞こえない程度に独り言を呟く。
「・・・誰だ、そなたたちは?」
(ん・・・?ユリア・ジュエの縁者かって前は言ってたと思うんだけど、あぁそうか。ティアがいねーからか)
そんな中で長のチーグルの声が届いてきたが、以前と違うセリフが聞こえてきた事にルークはティアの存在がないことだと考える。



・・・ユリアに関係する者とは言え、イオンの先祖に当たるフランシス・ダアトはユリアの子孫には当たらない。そしてソーサラーリングを作ったのはユリアであるため、直接的にはフランシスはチーグル族に関わっていない事になる。従ってあの言葉はイオンにではなく、ティアに対して向けられた事になる。



(ま、今となっちゃどうだっていいんだけどさ。ティアがいるとかいないとかさ)
しかしそんな些細な事などいいかと、自分でそれを考えておきながらルークは長の話に集中していく。



・・・それからチーグルが食料を盗んだという話からミュウがライガの住む森を焼き、この森に移り住んできたとこまで話を聞いた一同。
「食料が必要なのは分かるけど、それで盗んでくるってのは話が違うんじゃないの~?」
「だがそうでもしなければ我ら自身が食料にされてしまうかもしれなかったのだ・・・!」
「だ~か~ら~、そう言った人じゃないけどチーグルの都合だけで言うなって言ってんのよ。言葉だけは悪気があるように言ってるみたいに思うけど、あんたの言ってる事って結局自分達も被害者なんだから理解してくれって開き直ってるだけじゃないの。言ってておかしいって思わないの、自分で?」
「それ、は、確かに・・・」
そんな長の言い分に反論して言葉を無くさせたのは一同の中で、意外にもハロルドであった。



・・・普段は奇行に珍発言が目立つハロルドだが、天地戦争で勝利を得るまでまともな食料をお腹いっぱいに取れることなどまずなかったため、食料問題に関しては至ってまともな感覚を持ってはいる。地上軍の物資を横流ししていた闇商人に関しては厳しい目をしていたため、その辺りに関してはディムロスも信頼はしているのでハロルドの話の最中はウンウンと頷いてもいた。



「・・・とは言えハロルドさん、こうやって話していてもラチがあきません。このままでは問題が解決しない限りチーグルも食料を盗み続けなくては命を繋ぐ事が出来ませんし、ライガもずっと不本意なままこの森にいなくてはいけなくなります。まずはそれを解決しないと・・・」
「それもそうね」
そんなハロルドにイオンは以前と違いチーグルだけの立場に立った物ではなく、むしろライガの立場に近く寄った立場でこの事件を解決しないとと言い出し、ハロルドもそれに同意して頷く。



・・・以前と違い2才の経験しかなかったイオンと違い、ライガがアリエッタの母親と言うことを差し引いてもどちらに非があるかということくらいは分かるようになった。そしてその非がチーグルの方が強いことも、導師という立場にあること抜きにして理解している・・・だからこその発言であった。



「とりあえずライガとお話がしたいので長か誰かが僕達に付いて来ていただけませんか?通訳をしていただかなければ文字通り話になりませんので・・・」
「・・・わかりました。ではミュウ」
しかし目的はあくまでもライガを助ける事で、それがチーグルを助ける事にも繋がる。だからこそそれ以上暗にチーグルを責めるようなことは言わず通訳の者を頼むよう言うと、長はミュウを呼び出す。







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