必然は偶然、偶然は必然 第二十話

「ですから陛下に協力をお願いしたいんです、キムラスカに渡りをつけるために」
「キムラスカに、か・・・」
だからこそそんな事態を避ける為にと真剣な面持ちで言うイオンに、ピオニーの表情も固く変わる。
「今はまだルークがこちらにいてアクゼリュスが落ちていないことからキムラスカも行動を起こしはしないでしょう。ですが以降もキムラスカが行動しないと限りません、手段を問わず戦争を引き起こすために・・・そのような事態を避ける為には遠くない内にキムラスカに戦争をしないように諦めてもらう働きかけをするほかありません」
「・・・あぁ、確かに頷ける。だがそれをうまくいかせる手立てはそちらで考えているか?」
「えぇ、いくつかは」
それで尚戦争を避けるための道筋を語るイオンにピオニーは手はあるのかと確認すると、自信を覗かせイオンは頷く。
「まず以前バチカルに向かった時、インゴベルト陛下はフリングス少将が共に私といたことに気をとめてはいませんでした。こういった手段を使いたくはありませんが、もしキムラスカがこちらとの話し合いすらを拒否すると言うなら・・・ナタリア殿下の事実を公表する事もやむなしと、マルクト側から言えば受けざるを得ないと思われます」
「・・・成程」
それで出てきた案はフリングスがバチカルに行ったことをほのめかした上で、ナタリアの事を告げる・・・つまり脅すというもの。イオンのその案に、ピオニーから一言納得の声が出てくる。
「それにバチカルから出る前に私達はモースを査問にかける為にダアトに戻すと、インゴベルト陛下の前で彼を連れ出しました。そしてその後の顛末はダアト内で噂にこそなっているでしょうが、モースが今処分を下す為に軟禁中であると言うことはまだこちらでは公言はしていません。ですのでキムラスカとの繋がりのあったモースが全ての実権を失われて表に出れていない、という事を知ったなら向こうもどうすればいいかと思うでしょう。そこでモースの事に加えて諸々の事実を知ったなら・・・」
「・・・向こうも混乱の極みに陥るだろうな。そしてこちらのペースに持っていくのもそう難しくないはずだ」
更にモースの事を持ち出しその存在があればと言うと、ピオニーもその中身を把握し先を読んで言葉を紡ぐ。
「・・・まぁそういった取っ掛かりがあるなら、キムラスカも話を聞こうとしてくれるだろう。それから後は直に話をしてから、という事になるな・・・分かった、前向きに検討をしよう。だが俺の一存だけで全てを決める訳にはいかないから、今より重臣を集めて会議をしたいと思う。導師達は部屋を用意させるから、今日は宮殿で泊まっていけ。明日にはどうするか結論を出す」
「はい、わかりました。心遣いありがとうございます」
それで自身は賛同だと言いつつ重臣と話をするから宮殿に泊まれと言うピオニーに、イオンは丁寧に頭を下げる。
「・・・すみません、陛下。ついでという形というわけではありませんが、一つ聞いていただいてよろしいですか?」
「なんだ?」
「こちらのディストですが、見張りつきで構いませんのでしばらくこちらでお預かりしていただいてよろしいでしょうか?」
「・・・っ!」
だが忘れていたと頭を上げ願いを聞いてほしいと下から切り出すイオンにピオニーは首を傾げ、その中身がいきなり脈絡なく自身の事を切り出された事でディストは驚きと共に息を呑んだ。






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