必然は偶然、偶然は必然 第十九話
「「・・・っ!」」
・・・ルーク達の向けられた視線の先にいたイオンとシンクの二人の戦いは激化の一途を辿っていた、鈍く重い音が度々互いから響き渡る程に。
現にイオンのサポートの役目を負って振り分けられたはずのアリエッタにハロルドは術による援護などせず少し離れた所に立っていて、ラルゴとヴァンを倒して援護に入ろうとしていたディムロスにウッドロウにリグレットもその近くに立っている。そしてルークにクラトスにセネルはイオン達の方へと近付かず、アリエッタ達の方へと歩き出す・・・一同がこうやって傍観に入るのは、その戦いの激しさもあるが邪魔してはいけないと感じたからである。
「っ・・・どうやらヴァンもやられたようだね・・・!」
「・・・もういい加減認めたらどうなんですか、貴方も・・・二人とも倒れた以上、もう貴方に勝ち目はありません・・・!」
「だろうね、いくらなんでも僕一人じゃ九人も相手になんて出来ないし・・・けどここではいわかりましたって引くのも、シャクなんだよ。特にあんた相手に参りました、なんて言うのはね・・・!」
「・・・だったらシャクとかそう言った事も関係ないように決着をつけますよ、僕が貴方に勝ってね・・・!」
・・・その邪魔してはいけないような物とは戦いながら殺伐としながらも、イオンとシンクでしか通じないような会話をしているから。
ヴァンまでもがやられた事に気付きながらももう引くに引けないと悔しげに言うシンクに、イオンは反対にどこか楽しげに自身の手で決着をと言う。
・・・元々の予想で言えば経験の差で勝るシンクが有利、それはイオンも承知の上の事でこの戦いに挑んでいた。しかし戦いとは流動して変化するもの、状況が次第に動いたことで精神的な要素により経験の差は埋められる事となった。
まず最初のヴァンのらしくない姿に、これはシンクもイラつきと共に多少の動揺を覚えた。その次に動揺をしたのは病弱であるはずのイオンが何事もなく肉弾戦で戦いを挑んできたという事が、シンクの常識を覆した事で更なる動揺を誘った。そして何より動揺を招いたのは神託の盾の兵士達が軒並み倒された上で次にラルゴ、そして自分より強いはずのヴァンがことのほかあっさりと倒された事であった。
元よりシンクはその冷めた考え方に付随するかのよう、冷静に物事を見れるだけの能力は十分にあった。そんなシンクだからこそ次第に理解出来た。今の現状ではどうあがいたところで自分一人で何も出来ないと。だが同時に世界を忌み嫌うが故にそんなことをただ受け入れたいなどと思える訳がなかった。負ければこの世界が残ってしまうと考えたが故に。
・・・そしてその茨とは言え望む道を閉ざそうとしているのは、同じ立場にありながらもダアト式譜術を被験者と比べて遜色ない威力で使えるということだけで生き残ったイオン・・・その事実が酷く心を乱していた、シンクを余計に意地にさせるほどに。だが対するイオンはこの戦いでシンクと決着をつけるため余計なことは気にせず、一意専心している・・・その心の在り方もまた、イオンとシンクの経験の差を埋める物となっていた。
・・・勢いがあるが経験の少ないイオン、経験はあるが意気消沈しているのを自覚しているシンク。二人の戦いは互角のままに共に進んだ。だが戦闘意欲は失われずとも、その肉体には確実にダメージは蓄積する・・・ルーク達は二人の姿が徐々に血に染まり、汚れていく様・・・そして疲れが見えるように息が上がっていく姿を見て、次第に感じるようになっていった。‘決着の時は近い’と。
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・・・ルーク達の向けられた視線の先にいたイオンとシンクの二人の戦いは激化の一途を辿っていた、鈍く重い音が度々互いから響き渡る程に。
現にイオンのサポートの役目を負って振り分けられたはずのアリエッタにハロルドは術による援護などせず少し離れた所に立っていて、ラルゴとヴァンを倒して援護に入ろうとしていたディムロスにウッドロウにリグレットもその近くに立っている。そしてルークにクラトスにセネルはイオン達の方へと近付かず、アリエッタ達の方へと歩き出す・・・一同がこうやって傍観に入るのは、その戦いの激しさもあるが邪魔してはいけないと感じたからである。
「っ・・・どうやらヴァンもやられたようだね・・・!」
「・・・もういい加減認めたらどうなんですか、貴方も・・・二人とも倒れた以上、もう貴方に勝ち目はありません・・・!」
「だろうね、いくらなんでも僕一人じゃ九人も相手になんて出来ないし・・・けどここではいわかりましたって引くのも、シャクなんだよ。特にあんた相手に参りました、なんて言うのはね・・・!」
「・・・だったらシャクとかそう言った事も関係ないように決着をつけますよ、僕が貴方に勝ってね・・・!」
・・・その邪魔してはいけないような物とは戦いながら殺伐としながらも、イオンとシンクでしか通じないような会話をしているから。
ヴァンまでもがやられた事に気付きながらももう引くに引けないと悔しげに言うシンクに、イオンは反対にどこか楽しげに自身の手で決着をと言う。
・・・元々の予想で言えば経験の差で勝るシンクが有利、それはイオンも承知の上の事でこの戦いに挑んでいた。しかし戦いとは流動して変化するもの、状況が次第に動いたことで精神的な要素により経験の差は埋められる事となった。
まず最初のヴァンのらしくない姿に、これはシンクもイラつきと共に多少の動揺を覚えた。その次に動揺をしたのは病弱であるはずのイオンが何事もなく肉弾戦で戦いを挑んできたという事が、シンクの常識を覆した事で更なる動揺を誘った。そして何より動揺を招いたのは神託の盾の兵士達が軒並み倒された上で次にラルゴ、そして自分より強いはずのヴァンがことのほかあっさりと倒された事であった。
元よりシンクはその冷めた考え方に付随するかのよう、冷静に物事を見れるだけの能力は十分にあった。そんなシンクだからこそ次第に理解出来た。今の現状ではどうあがいたところで自分一人で何も出来ないと。だが同時に世界を忌み嫌うが故にそんなことをただ受け入れたいなどと思える訳がなかった。負ければこの世界が残ってしまうと考えたが故に。
・・・そしてその茨とは言え望む道を閉ざそうとしているのは、同じ立場にありながらもダアト式譜術を被験者と比べて遜色ない威力で使えるということだけで生き残ったイオン・・・その事実が酷く心を乱していた、シンクを余計に意地にさせるほどに。だが対するイオンはこの戦いでシンクと決着をつけるため余計なことは気にせず、一意専心している・・・その心の在り方もまた、イオンとシンクの経験の差を埋める物となっていた。
・・・勢いがあるが経験の少ないイオン、経験はあるが意気消沈しているのを自覚しているシンク。二人の戦いは互角のままに共に進んだ。だが戦闘意欲は失われずとも、その肉体には確実にダメージは蓄積する・・・ルーク達は二人の姿が徐々に血に染まり、汚れていく様・・・そして疲れが見えるように息が上がっていく姿を見て、次第に感じるようになっていった。‘決着の時は近い’と。
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