必然は偶然、偶然は必然 第十九話

「ラルゴは倒れた、シンクもいずれ倒される・・・そしてあんたももう終わる、俺達に倒されてな。今の俺らだけにやられてる現状であんたに逆転なんて出来ねーよ・・・降参しな、そうすれば楽に終わらせてやるから」
「くっ・・・認めん、認めんぞ・・・私が貴様らに負けるなど・・・!」
「認めない、ね・・・やっぱそう言うと思ってたよ・・・だからこそ、遠慮なく倒せる」
「何・・・っ!」
それで見下すように状況を伝えながら降参を勧告するルークに、苛立ちながらヴァンは拒否を示す。その答えを予期していたからこそ倒すとルークが強い意志を込めた目で言えば、ヴァンは意識してかせずか身を引く。
「はっ!」
‘ブンッ、キィンッ’
「くっ・・・!?」
その行動を見てルークは踏み込んで剣を振り下ろしヴァンは同じく剣で受け止める・・・だが受け止めたヴァンはその感触の違いと、ルークの行動に一瞬戸惑った。何故ならルークは剣を接触直前に放り、その勢いを使い自らの懐の左側に飛び込んで来たのだから。
「はっ!」
‘ゴッ’
「ぐあっ・・・!」
それでルークが右の拳で狙ったのはウッドロウの矢で怪我をした左肘の部分で、浅くない怪我をしているだけにたまらずヴァンも痛みに顔を歪める。



「終わりにする!・・・はあぁぁぁっ!くらえぇぇぇっ!レイディアント・ハウル!」



「ぐっ!?・・・おぉぉぉぁぁぁっ!」
・・・そして流れそのままにルークは終わらせると宣言し、全身全霊の声でレイディアント・ハウルを放った。決定的な隙を突かれ最初は耐えようとしたが、すぐにヴァンは超振動の威力に苦悶の叫びを上げた。
‘・・・ズザッ’
「・・・・・・」
「・・・どうやら気を失ったようだね」
「あぁ・・・ま、タフだしな。とりあえずはこれでいいだろ」
そして超振動も収まり地面に倒れこんだヴァンに動く気配がないのを見て取り、ウッドロウが近付き気絶したというのを確認するとルークはそれでいいと答える。
「俺達が応援に来た意味、なかったか・・・これ・・・?」
「いや、ありがたかったセネル・・・お前達が来てくれたおかげで一層動揺してくれたからな、多分来てくんなきゃあんな簡単に倒せはしなかっただろうし」
「謙遜をするな。あの場で武器を捨てて懐に飛び込むなど、例えヴァンが通常の状況でも予測していなかっただろう・・・胸を張っていい、お前の勝ちだ」
「そんなことねーよ・・・お前達がいてくれてこそ、俺は倒せたんだ。ありがといな」
「・・・別に、構わないよ」
ただ自身らの手を使わずにヴァンを倒した姿にセネルが微妙そうな表情になるが、来たおかげで楽になったとルークは返す。そんな答えにクラトスがお前自身の力だと改めて言うが、本心からウッドロウ達のおかげと感謝を示して笑うルークにセネルもそれ以上は言うまいと少し嬉しそうに顔を背ける・・・これがもしティア達だったらルークの行動を英断と断じる事もなく、たまたま成功しただけだから調子に乗るなと言っただろう。だがルーク自身今の行動は一度きりの物で考えがあっての行動だと思っているので、こうやってルークの事を理解してくれる仲間でいてくれることは僥倖であった。
「まぁいいだろう・・・残るはシンク一人だが・・・急いで行かなくていいのか?ウッドロウにリグレットは既に向こうに向かったようだが・・・」
「・・・そう言いつつもクラトスも分かってんじゃないのか?今の二人に下手な手出しはするべきじゃないって」
「・・・」
そんな中でクラトスが残るシンクを倒さなくていいのかと言うが、静かにシンクの方を見ながら言うルークの言葉に反論せず沈黙しながら同じように視線を向ける。沈黙は肯定、その言葉に何も返さない事が答えと言うように。








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